◇ 夜ノ星


キラキラ輝く夜空の星みたいに見えた。
本当に綺麗だったから。
見ていて胸が、熱くなったから。
君に見惚れる僕が居た。

「龍之介…何ぼーっとしてるの?行くよ。」

芥川を呼んでいるのはなまえ。
なまえは芥川の恋人で、半年前から同棲している。
将来を誓い合った仲だ。

芥川となまえの出会いは、ポートマフィア本部。
二人が出会ったのは本当に偶然で、然し互いに必然な様な気がしてならなかった。

何故なら二人は出会ったというより、階段で擦れ違っただけだったのだから。

唯一。

擦れ違った後、二人とも振り返り目が合った。

それは偶然だけど、偶然ではない。

言うなら"運命"というやつだったのかもしれない。

「龍之介、この私を無視しようっていうの?良い度胸じゃない。」

なまえがふざけて芥川に脅しの言葉を投げ付けるが、尚も芥川は茫然としている。

と、云うより、考え込んでいる様子。

なまえは軽く息を吐くと、黒い革張りのソファに座っている芥川の横に座った。
そして、芥川に寄り掛かり乍ら言った。

「ねぇ、何か悩んでるなら言って。一人で考え込まないでよ。私が居るのに。龍之介は独りじゃないんだよ?」

其の言葉に、漸く芥川が反応を示した。

芥川の眉間に皺が寄っている。

「…違うのだ。」

漸く開いた口から、囁く程度の声量で言葉が零れる。

なまえは何が?と優しく問う。

しかし芥川の眉間の皺は其の儘で、まるで思い詰めているかの様。

「僕となまえの住む…世界が。」

今日初めて芥川がなまえの目を見て言った。

でもなまえにはその意味が良く理解出来なかった。

半年も前から同棲しているのに"住む世界が違う"と云うのは可笑しい。

困惑しているなまえから視線を外し、芥川は続けた。

「なまえと暮らしていると、思い知らされるのだ。今まで意識しないようにしていたが、駄目だった。
なまえは僕とは違う。
なまえは何時でも輝いてて…星みたいで、僕は其れに見惚れて許りいる。
僕の手には届かないのだ、星は。」

ソファが少し軋み、芥川が両手を組み合わせ、前屈みになる。

星に、祈るかの様に。

なまえは芥川の横髪を少し掬い上げ、頬に口付けを落とす。

「でも、こんなに近くに居るよ。手も繋げるし、口付けだって出来るよ。
"心"だって、一つになれたじゃない。」

少し潤んだ瞳で、なまえが放った言葉は矢張り輝いていて、其れに見惚れる自分と、其れによって出来る自分の影に恐れる僕がいた。

なまえは、綺麗すぎるのだ。

其れ故惹かれるのは解っている。

然しなまえが僕と居る理由が解らない。

「…私が星なら、私にとって龍之介は、夜だよ。私は夜の闇が無ければ、輝けない。
でも私は輝いている。

夜の中…龍之介の手の中に居させてくれるから。」

なまえが芥川の手と自分の手を重ねる。

触れたところからなまえの体温が伝わる。

今まで何度も触れ合っていたのに、今までとは違う暖かさ。

距離がはっきり見えたから、その分寄り添うことができる。

独りでは見つからない答えも、二人なら見つかるかもしれない。

見つけられるかもしれない。

「もし、僕が夜なら、星…光りが必要だ。
そうでないと、迷ってしまう。
だから、僕にはなまえしかいない。」

キラキラ輝く夜空の星みたいに見えた。
その星が、夜が必要だと言った。
それは偶然か必然か解らないが、

言うならそれは"運命"だから。




2017.02.23*ruka


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*confeito*