◆ 君がため


月のみ光を注ぐ 暗黒の夜に
我が命 削りて光るは
君がため

一度消えては また光り
二度消えては なほ光る

我が命 削りて光るは

君がため


「なまえさーんっ起きてくださーい!朝になりましたよ。」

早朝六時、小山になっている布団に話し掛けている少年、敦。

敦の呼びかけは、虚しく空を響かせた。

…反応無し。

「なまえさーーーんっ!起きてくださいよ〜・・もう六時廻ってますよ?」

敦は布団ごとなまえの身体を揺らして起こそうと試みた。

…が、またしても無反応。

流石の敦も苦笑いを浮かべつつ、頬を掻いた。

「斯くなる上は…!」

敦は両手を握り締め、気合いを入れると次なる行動に出た。

「えいっ!!」

と勢い良く掛け布団を引っ剥がした。

「うーん…さ、サブイっ…」

「なまえさん、やっと起きましたか?」

「…スースースー」

「あれ…?」

反応はあったものの、再び眠りについてしまったなまえを見て、敦は大袈裟にガクっと肩を落とした。

「うーん、如何すれば起きてくれるかな…」

敦は腕を組み、唸りながら首を傾げていた

その時。

「…あつ、し…くん…」

「はい…?」

急になまえが敦の名を呼んだのだ。
と云うより、寝言だ。

「…なまえさん?もしかして、僕の夢を見ているのでしょうか?」

そう言った敦の頬は、少し赤みを帯びていた。

そしてまた、起きないなまえを眺め首を傾げた。

「何時までも、起きないなまえさんが悪いんですよ。」

そう言うと、なまえの頬にそっと手を添える敦。

「なまえさん、僕が今からする事を、貴女は許してくれますか?」

瞳を閉ざし、独り言のように呟く敦。

徐々に自分の顔をなまえの顔に近づけていく。

ゆっくり、ゆっくりと、なまえの唇に自分のを重ねた。

優しく甘く、秘密の口付け。

─我が命 削りて光るは君がため─

敦は、静かになまえの唇を開放した。
とても名残惜しそうに。

敦となまえの距離が戻った頃、固く閉ざされていたなまえの瞳が開かれる。

その瞳は、眠気眼ながらもしかっりと敦を捉えていた。

「あつ、し…くん?」

「…おはよう、ございます。なまえさん。」

敦は視線を逸らし、俯きながら言葉を放った。

なまえは当然の事乍ら状況が把握できない。
いつもなら笑顔で挨拶をしてくれるのに。

然し、なまえはぼんやりしていた頭が覚醒し、『今』の状況を把握した。

「あ、あつ…敦、くん?この手は一体…」

「え、あ、イヤ。違うんです!これはその、詰り…!」

バチンッー

静かな部屋に、一際大きな音が響き渡った。

其処には赤面し、手を震わせているなまえと、頬の掌型の赤い痕を摩る敦が居た。

「ご、御免ね?ビックリして…」

「いえ、僕の方こそスミマセン…」

少しの沈黙。

するとなまえがふと哀しげな顔を浮かべた。

「ねぇ、敦くん。敦くんは、戦わなくちゃダメなのかな?」

─月のみ光りを注ぐ 暗黒の夜に─

「何故、そんな事を…」

「私っ…私ね。敦くんと、こうやって戯れ合ってる時間が楽しくて、幸せだよ。
少なくとも、その刻は敦くんの本当の笑顔が見れるから。

そんな敦くんが、好きだから…っ」

─力を振るいて 血を浴びる─

「だから…敦くんの本当の笑顔を守りたい。」

─我が命 削りて光るは─

─君がため─

「…なまえさんは、可愛いですね。」

「えっ…」

─一度消えては また光り─

「でも大丈夫です。なまえさんが、傍に居てくれるのなら、ですけど。」

─二度消えては なほ光る─

「・・・・・・・あつ・・・」

「愛してます。なまえさんの事を。」

─我が命 削りて光るは─

「心より、貴女だけを。」

─君がため─




2017.02.23*ruka


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*confeito*