ガラス越しの死骸


 ビー玉、ガラスの破片、小さな花……きらきらと光り輝くそれを、俺はお菓子の空き箱へ集め続けた。箱の中はいつも綺麗なもので満ち満ちていた。幼い俺は、それを眺めながら、何度も蓋を開け閉めするのが好きだった。

 少し夏を繰り返すと、俺は年頃の男の子らしく虫の採集にハマった。蝶、カブトムシ、クワガタ。そのどれも艶かしい色を輝かせ、好奇心をくすぐったのだ。
 あの頃は虫取り網をただ一心に振り回していた。子どもの残虐さで命を虫籠に閉じ込め、綺麗だと眺めながら笑った。

 けれど命は永遠には続かない。虫籠から逃げた蝶は、やがて風船が萎むようにしわくちゃになって、地に落ちた。夏の過ぎたカブトムシは、何かをやり遂げたかのようにころりとひっくり返った。
 そんな燃え尽きてゆく命を眺めながら、俺はお菓子の箱を取り出した。箱の中はいつも、綺麗な世界が広がっていた。美しさを失うことなく、その輝きを惜しげもなく放っている。

 庭の片隅に掘られた墓の前で、箱を抱えた俺はどう映ったのだろう。母は頭を優しく撫でて言った。標本でも作ってみましょうか、と。

 次の夏、俺は標本の作り方を教わった。それは小さな手で作られた歪なものだったが、箱の中に広がる世界に、この蝶たちを連れていけた。そう手を叩いて喜んだ。
 ケースに入った蝶たちは、その美しさを枯らすことなくいつまでも羽をぴんと伸ばしていた。

 俺はその日から、更に目を輝かせて虫を追いかけた。全てはあの箱の中の世界を、時間に置き去りにされた美しさを求めて。色褪せることのない、ガラス越しの死骸に恋をしたのだ。
Twitterの企画、廃/墟/の/殺/人/ゲ/ー/ムに提出したオリキャラの過去話です。設定を固めるために書いたものです。



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スワンプマンの箱庭