初恋のはなし


「ねえねえ、ヤム! ヤムには初恋の人っている?」

 女子会と題したこの空間。
 城の近くの酒場で二人の少女が酒杯片手に恋愛トーク。ピスティがふとそんなことを言った。ヤムライハは持っていた杯を机に置きそうねえ、と考え出す。

「もちろんいるわよ。確か私がシンドリアに来た頃だったかしら」

「へー! 聞かせて! 聞かせて!」

 いいわよ、その口から言葉を大切に紡ぐ。ヤムライハの初恋の話。

 私がシンドリアに来た頃にはもうお城もできていて、お城の中庭が私のお気に入りだったの。
 白い花に赤い花、たくさんお花が咲いていて、不器用だった私は毎日そこで花冠を編んでは失敗していたわ。
その日も私は花冠を編んでいたの。もちろんぐちゃぐちゃだったけれど。
 そこにあの剣術バカが来てね、お前ヘタクソだなって。
 まあ当たり前だけどね。そのときの私は……まあ今も頭にきてるんだけど、怒っちゃって。
 魔法と剣術がどっちが強いかなんて、いつもみたいに喧嘩していたの。

 いつの間にか私は魔法を発動していて、あいつも剣を片手に振り回していて、そこにあった小さなお花を踏んづけてしまったの。それに気づいた私は大声泣き叫んじゃったのよ。
 そしたらね、ちょうど中庭にいたジャーファルさんがこっちに近づいてきて、なにかな? と思ってたら、

「はい、ヤムライハ。もう泣かないで? シャルルカンも、仲直り、ね?」

 そういいながらジャーファルさんは私の頭に花冠をのっけてくれたの。
 私は生まれて初めて男性に優しくされた気がして、綺麗に笑うジャーファルさんに見とれちゃって……。

「これが私の初恋の話よ」

「へーそうなんだ。意外とジャーファルさんってモテるね。ところでさ、ヤムはまだジャーファルさんのこと、好きなの?」

 ピスティが身を乗り出して聞いた時。

「はいはい、もうお開きですよ」

「ジャーファルさんっ、どうしてここに!?」

 えーっと頬を膨らまし色仕掛け、けれど相手にしない。さあ、ヤムライハも戻りますよ。
 そう言うジャーファルにヤムライハが

「ねえ、ジャーファルさん。覚えてますか? 私がお城に来たばかりの時あいつと喧嘩して泣いて……そのときに花冠を作ってくれたこと」

「ああ、覚えてますよ。確かお花が潰れちゃった、って泣いてましたね。それがどうかしました?」

 ううん、いいんです。
 そう言う彼女の頬は赤く染まっていた。

いままで幼少期ヤムだったのですが、大人ヤムさんも。
捏造満載の片思いです。



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スワンプマンの箱庭