☓☓病
アンタは美少女が好きだといった。
ぬれたような黒髪と、ガラスみたいにすきとおった肌と、そこにつつましく添えられたまあるい瞳と、はずかしげに染まっている唇が好きなんだと。そういえばアンタは、少女の病に犯されて電車にひかれたこともあったし、少女のかおりが残る蒲団にくるまったこともあったなあ。
そんなにも美少女が好きかと聞いたら、美少女はオレの人生の表題なのだとアンタは笑っていたのを思い出す。
反対におれはどうだろうか。そもそも成人男性だし、髪なんてあざやかな鴇色だぜ。肌の白さには自信があるが、生意気にも釣り上がった猫目とお世辞にも慎ましいと言い難い。よく回る立派な口は、アンタの理想像とはほど遠いだろうさ。
だからさ、アンタはいま驚いているんだろ? いままで見向きもしなかった――こんな色男なんかに組み敷かれているのだから。
驚いてまんまるに見開いているおまえの瞳がよく見える。みじかい睫毛にふちどられたそれがゆらゆら揺れていたから、その焦点を俺に合わせたい衝動に駆られた。思わず頬にキスをするとまんまるなわりに意外と肌がかさついていて、それがまた愛おしかった。
アンタの人生の表題は美少女だった。でもさあおれたち、生まれ変わったじゃないか。二度目の人生を謳歌しようぜ相棒。手始めに、おれに恋をしてみないか。花袋くんよ。