誰もいない
「ねえねえ、瑞希ちゃんも泉くんの方がかっこいいと思うよね!」
「絶対に嵐くんだよ!」
春風に桜がひらひらと散る外を気にせずそそくさとお昼ご飯を食べ、机に並べられたのは快速電車で数駅先にある夢ノ咲学院アイドル科の生徒であるKnightsの瀬名泉と鳴上嵐が載った雑誌だった。数年前のその雑誌には小学生である私の姿もあった。それが私であるとは彼女たちは思わないんだろうなと、すっかり変わり果てた数年前の自分を見る。きっとこの頃はモデルを辞め、綺麗に伸ばしていた色素の薄い茶髪をバッサリとショートボブに黒髪でおしゃれ丸眼鏡や可愛いフレームではない普通の眼鏡をかけて、メイクもしなくなって、普段着も浮き過ぎない程のシンプルさになっているとは考えも想像していないんだろうなと思った。
「でっ!瑞希ちゃんはどっち?」
「うーん。どっちもかっこいいと思うよ。……ごめんね。あまり二人のこと知らなくて。」
本当は何年も一緒に仕事をしてきた。いつからか瀬名さんのことが好きになっていた。この人の隣に立っても遜色ないモデルになるんだとずっと、ずっと憧れて背中を追った。なるちゃんみたに綺麗になるんだ。女の子らしくなるんだと一つしか変わらないなるちゃんにいっぱい色んなことを教えてもらった。そうしたら少しでも瀬名さんが私を見てくれるのではないかと。でもそれは遊木さんには叶わずで気が付いたらみんな周りからいなくなっていた。
「瑞希ちゃんは本当にこういうことに疎いっていうか、興味持たないよね。」
「それが瑞希ちゃんらしいけど。」
この学校に入学して数日なのに彼女たちに何を察されているのだろうか。
モデルを辞めると決めた時、母とよく衝突したものだ。それで父と母の仲も悪くなり、芸能界に興味が無かった父に付いて行き両親は離婚をしてしまった。元々母は浮気性でフラフラしていたこともあり父は離婚後すっきりしたのか前以上に明るくなった。母の旧姓で芸能活動していたおかげで名前で元モデルとバレることはない。今のところ。
「今度の土曜日、13時に夢ノ咲学院校門前で待ち合わせね。瑞希ちゃんもだからね!忘れないで来てよ。」
いつの間にかそんな話にと驚いた。私は行かないからと言おうとしたらチャイムが鳴り、二人は席に戻って行った。次の土曜日……、今日って木曜日で明日は何かの整備で休校じゃないかと運の悪さに身震いをした。今会ってもきっとバレない。そう信じ、瀬名さんやなるちゃん…、鳴上さんへの何かもわからない恐怖心にそうい言い聞かせた。