Marguerite

全て、痛みのせいだ


「呉羽、」

秀一さんに名前を呼ばれて振り向く。何か言いたげにソファーから私を見る秀一さんの真意に気付いた私は、頬を緩ませながら近付いて彼の足の間に腰を下ろす。
後ろから私のお腹に手を回されながら、私は秀一さんに寄りかかる。すると、それを待っていたかのように上から秀一さんが私の額にキスをする。

「仲良く、します?」
「たまには、な」

口角を上げながら、瞼や鼻梁、頬、いろんなところにキスを落とされる。私を抱き締める腕の力は少しずつ増していて、たまにではなくなってきている仲良しに私も笑みを浮かべる。

「ん……秀一、さん」
「そんな、物欲しそうな顔をするな」
「秀一さん、こそ」
「実際、欲しくてたまらないからな」

いっそ、鎖に繋いで俺だけのものにしたい気分だ。そう言って、上を向かせた私に口付ける。ゆっくりと、慣らすように。触れるだけの、キス。

「口、開けろ」
「っ、ん…」

薄く口を開けば、秀一さんはそのまま私の口を塞いで舌をねじ込む。刹那。

「―っ!」

口の中に痛みが走って、秀一さんの身体を押し離す。ズキズキと痛む口を押さえていると、突然の私の行動が理解出来なかった秀一さんが首を傾げる。

「呉羽…?」
「口内炎…痛い……」
「口内炎……」

秀一さんの言葉に、コクコクと頷く。ちょっといい雰囲気だったのに申し訳なくて、痛みの引いた口の中を恨めしく思いながら秀一さんに抱きつく。ぐりぐりと頭を秀一さんの身体に押し付けるようにすれば、秀一さんはフッと笑いながら私の頭を撫でる。

「仲良くするのは、お預けだな」
「口内炎が憎い……」
「そんなに仲良くしたかったのか?」
「構って欲しいときぐらい、ありますよ」

そういうことをするのだって、嫌いなわけじゃない。むしろ、好きだ。ちょっと意地悪だけど、優しくて。いつもより少しだけ饒舌で。

「口内炎が落ち着いたら、いくらでも構ってやるさ」
「絶対ですよ?」
「あぁ。それに、口以外にならいくらでもしてやる」

ちゅ、とリップ音をさせながら、秀一さんが私の額にキスをする。一週間ぐらいは、仲良くするのはお預けだろうか。

「それとも……痛いことを承知の上で仲良くするか?」

耳元で囁くように秀一さんに問われて、羞恥心が込み上げる。赤くなった顔を隠すようにぎゅっと秀一さんに抱き着けば、彼は私の頭を撫でながら笑う。
こんな風にさせたのは、秀一さんのくせに。そう小さく告げれば、まるで誤魔化すように頬にキスをされた。

「お預けの間でも、ハグや添い寝はいくらでもしてやる」
「……意地悪」

ちらりと秀一さんを見上げれば意地悪く笑っていて。私はそれに対抗するように、秀一さんに口付けた。

2015.09.1
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