ピピッ、と電子音が鳴る音がして、咥えていた体温計の小さな画面を見てとうとう来たか、と苦笑いをする。以前メアリーさんにリンカルとグリーンゼリーを貰って二ヶ月。リンカルは貰った当日から服用を始めて、同時に基礎体温を付けるようにした。赤ちゃんの性別なんて授かりものだから最終的にはどうにもならないのだけれどやらぬ後悔よりやる後悔。地道にその為の準備をしていた。
「体温、測り終わったか?」
「あ、うん。待って、メモだけする」
「急がなくていい」
先に起きた秀一さんがベッドに腰掛けて、体温計に表示されている数字をノートに書き写す私を見る。やるからにはちゃんとしておこうか、ということで毎回ノートに書き写されてグラフになっているそれは今自分が低温期なのか高温期なのかハッキリと分かるグラフになっていた。そして、今日の体温を書き写すとそれは明確になる。
「あの、ね、」
「どうした?」
「その……排卵、今日ぐらいにあると思う、」
小さく私が秀一さんに告げるのと同時に、顔に熱が集まる。男の子が欲しいならば排卵日当日に、と言われてから生理が終わってからも念のため秀一さんには禁欲生活をしてもらっていた。半ば誘うような言葉に羞恥心を覚えていると、秀一さんはフッと笑みを浮かべて私の頭を撫でる。
「今日の夜、だな」
「ん……。ごめんね?秀一さんにさんにも付き合ってもらうことになって、」
「構わん。それに、これも経験になる」
「ありがとう、」
秀一さんに頭を撫でられて、ぎゅっと抱き着く。念のため、ということで禁欲生活だったわけで、久しぶりに抱かれるというのは素直に嬉しい。子どもは早めに寝かしつけないとな、と思いながら頬を緩めた。
+ + +
お風呂より少し熱いぐらいのお湯を用意して、その中にグリーンゼリーが入った容器を入れてゼリーを溶かす。シリンジで中に入れるのか、と説明書を見ながら首を傾げる。シリンジで、中に?
(え、入る……?)
秀一さんとセックスをしたことはあるしシリンジはタンポン程度の大きさだから物理的に言えば入る。けど、セックスをするときやタンポンを入れるときはいわゆる潤滑油的な役割をするものがあるわけで、今はそういうときなわけではないから入るのだろうか。入れて入れられないことはないのだろうけれど。
「お、女は度胸……!!」
出産経験だってあるんだ、大丈夫なはず。何より子ども二人を寝かしつけに行った秀一さんが戻ってくるより前にグリーンゼリーを中に入れないと私の方が危ない。絶対俺が入れるって言う、秀一さんなら言う。
お湯に入れていたグリーンゼリーがちゃんと溶けたのを確認して、シリンジに適用量ぐらいを吸い上げ手で触れて温度の確認をする。この程度の温度なら、膣内に入れても大丈夫だろうか。一度落ち着かせるように息を吐いて、脚を開いて下着を脱ぐ。なんとなく自分を慰めるような感じの状況に少し苦笑いをした。
「さっさと入れた方が気持ち的に楽じゃないか?」
「ひゃあっ!」
まさかいるなんて思ってもいなくて、ビクリと肩が跳ねる。状態が状態だけに見られたくなかったのだけれど少しだけ楽しげに私の方を見る秀一さんを軽く睨めば秀一さんはフッ、と笑って降参だとでも言うように両手を上げた。絶対そんなこと思ってもないくせにする仕草に意味はあるのか。
「寝かしつけるの早すぎ……」
「少し前からうとうとしてたからな。ほら、貸してみろ」
「自分でするから大丈夫…って、ちょっと…!」
ベッドの上で脚を広げて座る私の後ろから抱き着くように秀一さんがお腹に手を回してシリンジを奪い取る。さすがに秀一さんにされるのは、とシリンジを奪い返そうと手を伸ばすけれどどうしてもあと少しが足りず、名前を呼ばれて視線を秀一さんに向ければここぞとばかりに唇を塞がれて舌が絡ませられた。
(ずるい、)
経験の差なのか、それともそもそもの素質というものなのか。こうして私を黙らせて自分が流れを掴むのが上手いのは、ずるいと思う。シリンジを持っていない方の手で後頭部を押さえられて拒むことの出来ないキスに秀一さんの服をぎゅっと掴む。
「っ、ゃ……!」
キスをされながら腿を撫でられて、茂みの無いそこにシリンジが触れる。様子を見つつゆっくりと胎内に入れられてその動きに合わせるようのビクビクと身体を震わせながら何とも言えない感覚に耐える。生理中にタンポンを入れるときとも、セックスをするときに指で触れられる感覚とも違う。
「ひっ、ぁ……!」
「大丈夫だ、」
生暖かいものがお腹の中で広がって、シリンジを締め付ける。唇が離れて漏れた声に秀一さんが落ち着かせるように耳元で囁かれて、涙目になりながら唇を噛みしめた。全て中に出し終えたシリンジが数回だけ律動して引き抜かれ、その感覚に肩を震わせながら、はっ、と息を吐けば秀一さんは褒めるように私の額にキスをして落ちそうになっていた涙を拭う。
「シリンジは使い捨てか?」
「ん……。ちょっと横になる…」
腰を高めにしていた方がいいんだっけ、と思い枕を取って腰枕にする。何で自分ですると言っているのにこうも秀一さんは自分でしたがるのか、と少しだけ恨めしく秀一さんを見れば子どもを褒めるように私の頭を撫でる。別に褒められたくて見てたわけじゃないのだけれど、その動作だけで何だかんだ許す私は秀一さんに甘いと思う。
「5分ぐらい横になっていた方がいいのか…」
「みたい。秀一さんお預けだね」
「別に下を触らなければいいんじゃないか?」
「え」
ギシリ、とベッドの軋む音がして秀一さんが私の上に覆いかぶさる。それはどう考えてもそういうことで、確かに説明書にも5分経ったら性行を、とだけなのでどこから性行というかは人それぞれというかぶっちゃけると挿入なのか否か気になっていたのは事実だけれど今はそういうことを考えている場合じゃない。
名前を呼ばれて、過剰に肩が跳ねる。普段もしてる行為なのに妙に緊張しているのは、二人目を産んだ後初めての行為をするとき以来だろうか。
「緊張するか?」
「ちょっとだけ……。ゼリーとか、使ってるし…」
「あまり気負わなくていい」
布のこすれ合う音がして、秀一さんが着ていたスウェットを脱いで鍛えられた上半身が露わになる。何度も見て何度も抱かれているのにどうしてだろうか、この瞬間に毎回胸が高鳴って見てはいけないようなものを見た気分になるのは。
戸惑う私を見て秀一さんが口角を上げて、私の頬に触れる。受け入れるように唇を開いて腕を伸ばせばキスをされて、苦みのある舌が私の口内を犯していく。
「っ、ふ……ぁ、んん、」
秀一さんと恋人になったときから何度もこういうキスはしているのに、慣れないのはどうしてだろうか。頭がクラクラして、溶けてしまいそうになる。
ワンピースのような作りのパジャマの裾から秀一さんの手が素肌に触れて、服をたくし上げる。ゼリーを入れるために下着を脱いでいたから服をたくし上げられると全てが露わになって、恥ずかしさから秀一さんの身体を押すけれども気にする様子も無く私の身体に触れる。
「腕上げてくれ、」
「ん……」
素直に腕を上げて身体を少し浮かせれば、秀一さんが私の服を脱がせる。絶対に行為をすると分かっていたし下着はさっき脱いだからそれだけで生まれたままの姿になった。昔に比べたら体系だって崩れてるけれどそれでも私を脱がせるたびにマーキングのように痕を付けることに嬉しさを感じつつ秀一さんの背中に腕を回す。
「5分、だったか」
「ん、」
首筋に顔を埋められて、ピクリと身体が震える。子どもを褒めるように頭を撫でられつつ首筋に唇が触れて、リップ音をさせながら痕を残されていく。チクリとした痛みは徐々に下へと降りて、同時に肌の上を滑らせるように秀一さんの手が膨らみへと触れた。
「ひゃっ…、ぁ、ん」
舌が首元から胸元へと滑り降りて、先端へと触れる。舌先で触れられるのと反対側は軟さを確認するようにゆっくりと揉まれて、じわじわと侵食していくように身体に熱が入ってくる。
「んんっ…ぁ、」
手の甲を口元に押さえつけて、それでも漏れてしまう声が耳に届く。じわりと生理的に涙が溢れるのを感じながら秀一さんを見れば、音をさせながら少し強めに吸われてビクリと身体が跳ねて反射的に腰を浮かせた。
「緊張しなくていい、」
「無理ぃ……ぁ、ん…!」
いつも以上にドキドキして、クラクラする。脚を開かされて、脚の間に秀一さんの身体が入る。腰の下に枕を置いたままの私の身体が脚を開くと必然的に秀一さんに見せつけるような体制になって、脚を閉じようとするけれどそれも叶わずに押さえつけられる。
「少し、触るぞ」
「んっ……ぁ、あっ、」
秀一さんの指で中心を割り開かれて、その中にある蕾に指先が触れる。決して中に指を入れずに蕾だけを集中的に触るのは、ゼリーを使っているからだろうか。その間にも膨らみの先端は舌で転がされて、上と下両方からの快楽にそこが秀一さんのを欲するようにヒクつくのが分かる。
「ひっ…ぁ、あっ…!秀一、さん…ゃ、あ、」
「気持ちいいか?」
「やっ…ぁあ、だめ、」
膨らみの先端を軽く甘噛みされて、熱が入って敏感になった蕾を擦るように指の腹で触れられる。痺れるような快楽の中に突き落とされるような感覚に腰が疼いて、ぎゅっと秀一さんの背中にしがみ付いて甘い声を吐き出して快楽に耐える。もっとされたい、大きな快楽に溺れていたい。
「ほら、言わないと分からないぞ」
「やぁ…!分かってる、くせにぃ…!」
「さぁな。ほら、溢れてくるのがゼリーかもしれないだろう?」
「ひゃっ…!ば、かぁ…!」
下から上へとヒクついたそこを指でひと撫でされて、快楽を今か今かと待ちわびている私のそこはすんなりと指を受け入れられる筈なのに入れないのは絶対にわざとだ。恨めしく秀一さんを見上げれば彼は楽しげに笑うだけでわざとらしく蕾を避けるように中心に触れてくる。
「呉羽が気持ちよくならないと、男が出来ないだろう」
「んんっ…、気持ちいい、からぁ…!もっと、ひゃっ…ぁん!」
「もっと、何だ?」
「触って…、口で、してぇ…」
やわやわと与えられる心地いいけれども足りない感覚に舌っ足らずになりながら秀一さんにお願いをすれば、そこまで言われると思っていなかったのか一瞬動きが止まって、けれどもすぐに口角を上げて頭を脚の間に滑り込ませて指で中心を広げられる。それだけで理性なんてほとんど残っていない私の身体はゾクリと震えた。
「ひっ…ぁ、ああ、」
秀一さんの舌が、私の中心に触れた。ゆっくりと撫でるように舐められて、それに合わせて甘ったるい声が部屋に反響する。甘噛みをされたり、舌で押されたり、不規則な動きをする快楽が私を襲って受け止められない熱を嬌声として吐き出す。やけに愛撫が念入りなのはメアリーさんの下手なのかという言葉を根に持っているのか、それとも禁欲していたことの方か。どちらだろうかと思った次の瞬間にはそんなことを考える余裕も無いぐらいの熱が与えられてさらに私は身体を跳ねさせる。
「ぁ、あっ…!らめっ…気持ちい……だめぇ、」
「んっ…一度、イっておくか?」
「はっ、ぁあ…イきた……ぁ、っあ!」
私の言葉を聞くや否や、ちゅ、と水音をさせながら蕾を吸われる。シーツを握りしめて腰を浮かせて、徐々に余裕が無くなってくる身体に力が入っていく。途端、つぷりと私の中に秀一さんの指が入って中を刺激する。指の腹を上に向けて撫でるように、けれども的確に触れられて脚が震えて秀一さんの髪にくしゃりと触れる。
「やっ、ぁあ…!だめっ…そこ、だめ、だって…ぁ、ああっ、」
「気持ちいいの、間違いだろう」
「ひぅ、ぅ、あ、だめ、来ちゃっ…なんか、来ちゃ、のぉ…!」
舌っ足らずに秀一さんに静止を求めるけれども秀一さんは気にした様子もなく愛撫を続けて、何かが迫りくるような感覚に涙が零れ落ちる。いつも以上にゾクゾクと震える身体に腰が揺れて、止めてほしいとも思うのにもっとされたいとも思う。
「あっ、あ、あんっ…!やらっ、ぁ、あ、」
「はっ……。呉羽、」
「んんっ……ぁ。あ、だめ、出ちゃ、」
「出して、いい、」
「っ、ぁ、だめっ……ぁ、あっあああっ」
秀一さんに与えられる刺激に自然と下腹部に力が込められて、指を締め付ける。同時に蕾からは液体が吐き出され、肩で呼吸をしながらぼんやりと顔を上げた秀一さんを見た。
2017.02.07
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