突然の訪問者
家の、チャイムが鳴った。来客の予定はあっただろうか、と首を傾げながらリビングにいたまだ幼い子どもを抱っこして玄関の扉を開けた。
「…よお」
「あ、新聞いりませんので」
「っオイ!」
扉を開ければ、随分と久しい顔。とりえずとばかりに扉を閉めてみれば容赦なく扉の前に足を置いて阻止された。…もしこれが安室さんなら私は容赦なく扉を閉め続けただろう。
何しに来たの、と問えばこっちまで来たから寄ってみた、とのこと。住所はどうしたのかと思ったけれどそういえば年賀状のやり取りだけはしてたんだっけ、と思いだしてとりあえず家の中に入ることを進める。
「赤井さんは仕事か?」
「そりゃあアポ無しで来たら仕事だよ」
「悪かったって…」
適当に娘をリビングに放牧して、突然やって来た彼…工藤君に、適当に座るように促す。毛利さんは?と聞けばやっぱり日本にいるらしく、工藤君は探偵業でこっちに来ていたらしい。
「もう、毛利じゃねぇけどな」
「え、何。やっと籍入れたの?」
「おー」
今の若い子って結婚までゆっくりだよねぇ、なんて紅茶を工藤君に出しながら言えばオメーが早かっただけだろうが、と言われて苦笑いをする。
工藤君を出迎えたときにおもちゃを広げる子は下の子で、上の子はもう1人で外に遊びに行くような年齢だ。秀一さんの希望で、あまり遠くには行かせないようにはしているけれど。
「2人姉妹、だっけ?」
「そ。私としては男の子も欲しいんだけどね」
出来れば秀一さんに激似の。そう言えば、彼は相変わらずなわけね、と苦笑いをした。私が秀一さんしか見ていないというのは在学中の頃から知っているというのに何を言う、と言いたくなったけれどそれはある意味お互い様だろう。工藤君だって、毛利さんしか見ていなかったのだから。
ふいに玄関の扉が開いて、パタパタと廊下を走る音がする。恐らく、上の娘が帰って来たのだろう。人のことを言えはしないけれど、女の子なのだからもう少し大人しくなってもらいたいものだ、と思いつつ息を吐く。
リビングの扉が開いて、ママ、と声を出したものの工藤君の姿を見るなり勢い良く扉を締める。同時に、パパ!ママが浮気してる!なんて言う声。どこで覚えてきたそんな言葉。
「って、え?パパ?いるの?」
私が立ち上がるのと同時に再びリビングの扉が開く。そこにいたのは秀一さんで、私が浮気していると言った張本人は秀一さんの後ろから除くようにこちらを見ている。
「何だ、坊やだったのか」
「もう坊やって年でもないけどな」
「秀一さん、お仕事は?」
「思ったより早く片付いてな。途中で子どもの名前に会ったから連れて帰ってきた」
子どもの名前は工藤君を怪しい人だと思っているのか、睨むように工藤君を見ている。工藤君もどうしたらいいのか分からずに苦笑いをしながら子どもの名前を見る。
「工藤君嫌われたね」
「嫌われたっていうか疑われてんだろ…」
「大丈夫。私秀一さん一筋だから」
子どもの名前が秀一さんからようやく離れる。けれど、工藤君への警戒はまだあるらしく極力近付かないようにしながら彼から離れていく。初対面の人に警戒心が強いのは、秀一さんに似たのだろうか。下の子が初対面の人に抱っこされようとも平気な辺り、私に似たようなきがするのは否定しない。
私が秀一さんにコーヒーを淹れていると、男2人で昔話やら何やらで地味に盛り上がっているらしい。
(似てる、よなぁ…)
妙に頭がいいところとか。年は離れているけれど、似てるから話も合うのだろうか。2人が話す姿から昔のことを思い出して、思わず口角を上げた。
2015.08.27