とある前夜祭

 
「秀兄に愛想が尽きたら、いつでも呼んでいいからな!」
「そうだな…。もしコイツが何かしたら私も相談に乗ろう」

真純とメアリーさんの言葉に、つい苦笑いを浮かべる。私の隣に座っていた秀一さんを見れば、2人を見て呆れたように息を吐いた。
2人とも冗談ではあるのだろうけれど、ちょっと本気なような気もして怖いものがある。

「というか、お前は名前に愛想尽かされたら次は無いんだからしっかり繋いでおけよ」
「大丈夫ですよ。秀一さん何気にモテますから」
「……コレがか?」
「えぇまぁ」

意味が分からん、というようにメアリーさんは秀一さんを見る。秀一さんは女3人で集まっているからもう手が付けられないと思ったのだろうか。何も言うまい、というようにお酒を口に運ぶ。女3人寄れば姦しいっていうし、仕方がないかもしれないけれど。

「そういえば、名前の家はどうするんだ?結婚するなら秀兄と住むんだろ?」
「売ってもいいかなって思ったんだけどね、秀一さんがどうせなら残してたらいいだろって言ってくれたからそのままにしておく」
「家、痛まないか?」
「工藤君に気が向いたときに掃除をお願いしてるから、大丈夫かな」

その代わりにミステリー小説いろいろ頼まれちゃったけど。そう言えば、真純が確かに頼みそう、と笑う。どうやら工藤君はアメリカで先に発売するようなのとかを送ってもらいたいらしい。英語が読めるというのはこういうときに便利かもしれない。翻訳されたものをわざわざ待たなくていいのだから。

「…ところで、そろそろ日付変わるぞ」
「え、嘘!?」
「みたいだな。片づけるか」

秀一さんの言葉で時計を見れば、確かに日付は変わろうとしていた。机の上に置いてあるグラスをメアリーさん真純が片づけようとしたのを止めれば、夜更かしして花嫁が隈作ってどうする、とメアリーさんに呆れたように言われて私の動きが止まる。

「秀一さんにはそれを言わないんですか…」
「アイツは普段からそれだからいい」
「むしろ秀兄に隈が無い方が珍しいと思うけど」
「お前ら……」

呆れる秀一さんを見て少し口角を上げつつ手早く机の上を片づけてグラスを洗い始めたメアリーさん。さすが子どもを育てた経験のある人は違うわ、と思いながら私と真純でゴミやら何やらをまとめる。
そんなに散らかしていたわけじゃないし、片付けは思ったよりもすぐに終わった。明日の為にも早めに寝ようとかみんなで言っていたのに結局盛り上がってこの時間になってしまった。メアリーさんと真純を部屋に通して、私と秀一さんも寝室に入る。

「名前、」

ベッドに転がると、秀一さんに名前を呼ばれたので腕を伸ばす。秀一さんはその手を取って指を絡めて、私へとキスを落とす。角度を変えてされるそれに頬を緩ませていると、秀一さんが覆いかぶさって私の服と身体の間に手を滑らせた。

「…えっち」
「好きだろう?」
「好きだけど、今日は駄目」

明日隈作ったらいけないらしいから、また仲良くするのは明日ね?そう言えば、秀一さんは素直に諦めたらしく私の額にキスをして隣に転がって私の身体を引き寄せた。

「明日なら、いくらでもいいんだな?」
「ん、楽しみにしてる」

甘えるようにぎゅっと秀一さんに抱き着けば、またキスをされて。明日のことを思い浮かべて頬を緩ませながら瞼を閉じた。

2015.10.21