彼女の裏側06
*安室さん視点
部屋に入って扉を閉めた瞬間、彼女がぎゅっと僕の手を握った。どうしていいのか、わからないのだろうか。隣に立つ彼女の髪に触れれば、ビクリと彼女の肩が揺れる。
「っ…あ、の…」
「別に、取って食べようなんて思ってませんよ」
「そ、う…です、か…」
恥ずかしそうに繋いでいない方の手で彼女が口元を隠す。僕から見える耳は真っ赤で、その姿に思わず頬を緩ませる。
彼女の手を引いて、あからさまに配置されたベッドに座らせる。その隣に自分も腰を下ろせば、その瞬間にまた彼女がビクリと揺れる。
「大丈夫ですよ。今日は、抱きませんから」
「い、いつかは抱くってことじゃん……」
「まぁ、いつかは」
心の準備が出来てからなら、と彼女がぽつりと呟く。そういう仲になったらいずれはそうなるだろう。今は、手を出すつもりはないけれど。
彼女の髪に触れると、息を呑む音が聞こえた。それだけ、緊張しているのだろうか。
「キスは、許されますか?」
「少しだけ、なら……」
「こっち、向いてください」
頬を真っ赤にした彼女が、顔を上げる。頬に触れて顔を近づければ、彼女が視線を逸らす。さっきの居酒屋での方が、まだ照れていなかったのではないだろうか。
そのまま触れるだけのキスをして、ゆっくりと離れる。一瞬視線が交わって、また目を逸らされて。それがたまらなく可愛くて、角度を変えてまた彼女にキスをする。
「っ、んん……」
「息は、止めなくてもいいですよ」
「なんと、なく…」
「可愛い、」
耳元にキスをすれば、彼女が僕の服をぎゅっと握る。その仕草がまた可愛くて、彼女を腕の中に閉じ込める。腕の中でおずおずと彼女も僕の背中に腕を回して、思わず自分の頬が緩むのが分かる。
「もう少し、触れてもいいですか?」
「ど、どれぐらい……?」
「貴方が、嫌と言うまで」
「嫌って言ったら、やめてよ…?」
よっぽど恥ずかしいのか、彼女が視線を逸らしながらそう言った。ただ、やめられるかどうかの問題はあるが。
彼女の唇にキスをして、酸素を求めるように開いた隙間から舌をねじ込む。瞬間、ぎゅっと服を握られて、彼女の身体が強張る。
「ん…っ、ふ、」
「は……まだ、いいってことですか?」
「待っ……んんっ、!」
ゆっくりと彼女の身体を押し倒して、言葉を紡ぐのを阻止するように口を塞ぐ。彼女が僕の方を掴んで必死で押してくるけれど、力では敵わないのをいいことにキスを繰り返す。
「――っ、」
「は、い……?」
耳元で彼女の名前を呼べば、恥ずかしそうに、でも視線を逸らすことはなく返事をする。
リップ音をさせて額にキスをして、彼女を引き寄せながら隣に転がる。
「このまま、朝まで抱きしめててもいいですか?」
「っ、は、い……」
恥ずかしそうに僕の胸元で返事をする彼女に、頬を緩ませる。夜は、まだまだ長い。
掲載期間:2016.06.01〜2016.07.03