ご褒美
*映画後
ホンマ、疲れたわ。そう言って帰ってくるなりちょお休ませて、と言ってベッドに転がった貴大が呟いた。お疲れ様、と貴大が転がるベッドに腰掛けて私が貴大の頭を撫でれば、彼は無言のまま私に近付いて後ろから私のお腹に腕を回して抱きつく。
「ふふっ、今日の試合大変そうだったもんね」
「……何でそんなバッチリ見とんのや」
「そりゃあ貴大の勇姿だもん。何か、訳ありなんでしょ?」
ピクリ、と貴大の指先が動くのを私は見逃さなかった。ぎゅっと腕の力が強くなって、貴大の手に私の手を重ねればそれに縋るように握りしめられる。
「ふふっ、何年貴大のサッカー見てきたと思ってるの?]
「あまりカッコ悪いとこ見るなや、」
少し拗ねたように貴大が私の身体に押し付けながら言う。わりと強く私の身体に回されている貴大の手を放して私が身体を貴大の方へと向ければ、彼はそれに甘えるように転がったまま真正面から私に抱き着いた。
「ありがと、貴大」
「何や、突然」
「なんとなく、かな。貴大が何かと戦ってたことだけは分かるから」
そうでないと、あんなプレーにはならないでしょう?そう言ってくしゃくしゃと貴大の頭を撫でれば、彼はふいに顔を上げてじっと私の顔を見つめる。黙ったまま動かない彼を見て私が首を傾げれば、彼は腕を伸ばして私の頬へと触れる。
「名前から、キスしてや。俺頑張ったんやし」
「え、」
「ええやろ?それぐらい。頑張った俺に、名前からのご褒美」
「……目、閉じてよ」
「ん」
素直に目を閉じた貴大の頬に触れて、唇を重ねる。一度軽く触れて鼻レア唇に貴大は不満だったのか、今度は貴大の方から何度も繰り返すように唇に触れられる。
「貴大、待っ……!」
「ん……、まだ、足りんわ、」
貴大が身体を起こして、どさりと音がするのと同時に私の身体がシーツに沈む。貴大は私の身体に馬乗りになっていて、熱を帯びた表情で私を見下ろす姿にゾクリと背中が震えた。視線が交わると貴大が口角を上げて、また私の唇を塞ぐ。
「っ、んん…!ふっ、ぁ、」
貴大の舌が、私の口内を犯す。慣れないその動きにぎゅっとシーツを握りしめて、同時に呼吸が止まる。貴大はキスを止めるつもりは無いのか何度も何度もキスをして、どちらのかも分からない唾液が口端を伝い落ちる。あまりの苦しさに貴大の身体を押せばようやく貴大の唇が離れて、ちゅ、と音を立てながら額にキスを落とされる。
「名前は、もうちょっとキスに慣れなアカンな」
「だっ…て、貴大としかしないし……」
普段あんまりこうして会うことも少ないのに、何故慣れられると思ったのか。それは貴大だって同じなはずなのに、どうしてこんなにも手慣れているのか。聞きたいことはいっぱいあるけれど、楽しげに私の頬にキスをする貴大を見て思う。
「なぁ、もっとキスしもええか?」
「嫌、って、言ったらしない?」
「我慢は、する。あんま出来そうに無いんやけどな」
「……いいよ、しても」
それ以上は駄目だけど、普段こうやってあんまり会えないし。貴大から視線を逸しながら呟く。こうして貴大と仲良く出来る事自体は嬉しいから、求められて悪い気はしない。さすがにそれ以上となるといろいろと準備的なこともあるから出来ないけれど。
何も言わなくなった貴大にどうしたのかと彼を見上げれば、同時に貴大に抱きつかれて腕の中に閉じ込められる。
「え、貴大?」
「アカン、名前可愛すぎやろ…」
「何よそれ…」
「悪いけど、あんまり我慢出来んからな」
少しだけ顔を赤くした貴大に顎を持ち上げられて、キスをされる。驚きで少しだけ開いていた唇から舌が絡め取られて、じわりじわりと貴大の熱が私を侵食していく。それを受け入れるように、私は貴大の背に腕を回した。
2016.11.20