火遊びからのつまみ食い

*若干のスコバボ要素含む

「あら、スコッチとバーボンはいないのね」
「あぁ。アイツら二人で出ていったぞ」

相変わらず仲がいいこと、と思い部屋に入ってきた私に見向きもしないで新聞に視線を向けたままのライに少しだけこの野郎、と悪態をつきつつ彼の隣に座る。スコッチとバーボンはまぁお互いにこの組織に入った時期が近いこともあって仲がいい。別に組織内での交友関係をどうこう言うつもりはないし、ホモだろうかレズだろうがノンケだろうが気にするつもりはない。こういうところにいたら特にバーボンは男にトラップを仕掛けることもあるだろうし。

「ライは寂しくお留守番?」
「まぁ、今は仕事が無いからな。なんだ、暇だったのか?」
「んー?そうねぇ、暇かも」

ライの腕に自身の胸を押し付けるようにして腕を絡ませる。ライ、スコッチ、バーボンと三人で行動する彼らの仲で正直私が一番好みなのはライだ。確かコードネームを持っていない女と恋人同士だったような気もするけれど火遊びぐらいならば許されるだろう。

「新聞読むより、エルクス・オウンでも作らない?」
「……随分な、誘い文句だな」
「そう?ベルモット直々のテクニック、使ってあげるけど」

ハニートラップを仕掛けた相手は一人や二人じゃない。組織内の男を使ってベルモット直々に技を仕込まれたこともあり、安い風俗の女に比べたらずっといいテクニックを持っている自身はある。勿論、身体だって人並み以上に努力はしているのだから多少の自信はある。

「ベルモット直々のテクニック、な……」
「気になる?」
「……君は、薄々気付いているんだろう?俺が何を目的としてここにいるか」
「それは、貴方も私の目的に気付いていると思っても?」
「さぁな」

ライが新聞をテーブルに置いて、私の頬に指で触れる。ライよりもこの組織に長くいる私は、多少なり鼻が利く。ライも、スコッチも、バーボンも、何を目的としてこの組織に所属しているかは把握しているつもりだ。私も目的は同じ。だからこそ、その中で一番好みなライに近付いたのだ。

「火遊びは、お嫌いかしら?」
「たまには攻められるのも悪くはない」
「ふふっ、後で攻めてくれるのよね」

ライの真正面に膝立ちになって、薄く開いた唇に私の唇を重ねる。隙間から舌を絡ませて、歯列をなぞりつつ差し出された舌を軽く吸う。ほのかに煙草の匂いが鼻を抜けて、そういえば時々吸っているのを見たな、と思いつつ彼の首に腕を絡ませれば彼も私の髪を掴むようにして後頭部に触れる。

「っ、ふ…、そそるわね、その顔」
「それは、お互い様だろう?」

一言言葉を交わして、再度唇を重ね合わせようと顔を近づける。二人とも目の前の食事に気を取られていたのは、確かだった。ガチャリと音を立てて部屋の扉が開かれるまで、全く外の気配に気づかなかったのだから。

「……外でやってくれませんかね、そういうことは」
「あらやだ、男にお尻を差し出すビッチが帰って来たのね」
「ライに股開く貴方に比べたらマシだと思いますけど?」
「そうかしら?ライの方が、ずっといい男だと思うけれど」

ちゅ、とリップ音をさせながら軽く触れるだけのキスをライにして、ライの顔を胸の膨らみに押し付けるように頭を抱き寄せる。生憎私はベビーフェイスに興味は無いしその後ろで苦笑いをする無精髭にも興味は無い。

「あなた達だってライがいないときにこの部屋好きに使ってるんだからいいじゃない。男同士は一度するとハマるって言うものね?」
「別に僕がホモだろうとノンケだろうと関係ないでしょう」
「えぇ、興味も無いわ。私の好みはライだもの」
「趣味悪いですね」
「生憎ベビーフェイスには興味なくって。ホモにはもっと興味が無いわ」

仕事となれば黙ってバーボンとも話を合わせて出ることもあるけれど、基本私とバーボンの相性は悪い。仕事をする上での技術や才能は認めているけれど、それとこれとは別の話だ。ドカッ、と荒々しく荷物を置いて向かいのソファーに座るバーボンを見ながら少しばかり名残惜しく思いつつもライから離れる。

「私の部屋に来る?一人部屋だし空気の読めないバーボンみたいな人間は入って来ないわよ?」
「遠慮しておこう。たまにはお預けでもするさ」
「あら残念。じゃあ、予約でもしておこうかしら」

ライの首筋に顔を寄せて、リップ音を立てながら首筋に吸い付く。ライに止める気はないのか腰をなぞる仕草に熱でも入れる気かと思いつつ唇を話せば、白い肌には赤い痕。暫くこれでライは誰かに仕掛けることは厳しくなってくるだろう。

「消える前に、一度エルクス・オウンでも作りましょう?」
「そうだな、暇が出来たら声をかけよう」
「ふふっ、ありがと」

セックスは嫌いじゃないし、何よりライの顔は好みだ。お互いどこまで情報を得ているのか確認し合うのもいいだろう。勿論、カクテルを作る気は満々だけれど。
心底気持ち悪い、と露骨に顔に出すバーボンにべっ、と舌を出してからスコッチの隣を通り過ぎて部屋を後にする。同じ匂い付けるからバレるんだよ、と悪態をつきながらヒールを鳴らしながら自分の部屋へと戻った。

2017.01.01