相似する姿

 
目が覚めた瞬間、彼女を見てドキリとした。真純は確かに女の子で、それは分かっているのに兄妹だからだろうか。一瞬、私の隣で眠る彼女が秀一さんに見えた。

(やっぱり、似てるんだなぁ……)

私の家に泊まった真純は私と同じベッドで寝て、まだ静かに寝息を立てている。その寝顔は、今は会えなくなった秀一さんを思い出させた。
手を伸ばして、真純の髪に触れる。少しだけクセのある髪質も、秀一さんを連想させる。

「ん……」
「あ…、ごめん、起こしちゃった?」
「んー……」

身じろいで瞼を上げた真純に声をかけたけれど、まだあまり起ききれてはいないのかぼんやりと私の顔を見ている。私が彼女の頭を軽く撫でれば、眠かったのか再び瞼を閉じて寝息を立て始めた。

(つい、ドキッとしちゃうなぁ……)

真純を起こさないようにそっと布団から抜けだして、赤くなる頬を押さえる。なにか時間があって推理しているときの真面目な顔とか、さり気なく腰を引いちゃうところとか、真純の中に見える秀一さんに今まで何度もドキッとしたことがある。それに秀吉さんと違って顔も似ているからか余計にかもしれない。

「会いたい、なぁ……」

今は沖矢昴として生活している秀一さんが、秀一さんに戻ることは少ない。それこそ変装をし直すときぐらいなもので、勿論そのときに会えないことだってある。家の中では時折秀一さんの声になるけれど、顔を見れば沖矢さんだ。恋人として触れることは無くて、あったとしてもそのときは私の視界は秀一さんの手によって奪われる。

「秀一さんのバカ……」

首に下げられた、秀一さんから貰った指輪を握る。一生会えなくなったわけじゃないけれど、寂しいものは寂しい。今までずっと一緒にいたから、余計にだろうか。本人には、絶対にそんなこと言わないつもりだけど。

「…名前、」

真純の私を呼ぶ声に、ドキリとした。低くかすれた声。秀一さんと似た声なわけでもないのに、秀一さんのことを考えていたからだろうか。一瞬、転がって名前を呼ぶ真純の姿が秀一さんに見えた。

「おいで」

トントン、と真純は自分の隣を軽く叩く。私が首を傾げて真純に近づけば、腕を取られて引きずり込むようにして真純の隣に転がされる。

「僕じゃ、秀兄の代わりにはなれないかもしれないけれど」
「え?」
「姿は、似てるから。今日だけ、秀兄の代わり」

私に腕枕をして、軽く額にキスをされる。一瞬本当に秀一さんでも乗り移ってるのではないだろうか、と考えたけれども真純がまた寝息を立て始めたのを聞いて苦笑いをする。多分、ただ寝惚けていただけなのだろう。秀一さんが私を甘やかすときのようなことをしたのは、兄妹だからなのかもしれない。

(二度寝、しちゃおうかな)

私に腕枕をして眠る真純は、反対側の腕で私を抱きしめるようにしている。抜けだして起こしてしまっても申し訳ないし、私ももう一度眠りに落ちてしまおう。瞼を閉じて、意識を手放した。

2016.04.19