言葉を求める

 
目を覚ますと、隣で昴が転がったまま本を読んでいた。普段ならさっさと起きて行動をするだろうに珍しい、と思いながらそのまま彼を眺めていると、彼は私からの視線に気付いたらしく視線が交わると口角を上げた。

「随分と、ぐっすり眠ってましたね」
「誰かさんのせいで、ね」

私が昴に腕を伸ばすと、彼は察したのか読んでいた本に栞を挟んで閉じる。そして私が伸ばした腕を掴んで手を取って、軽いキスをする。昨夜とは違う、触れるだけのもの。

「なんか、昴と普通のキスしたの久しぶりな気がする」
「そうですか?」
「ん……。そういうことするの、多かったし」

そうですかね、ととぼけるように昴が私の頭を撫でながら言った。
昴は見た目はどう見てもインドア系なのに意外に体力があって、夜にそういうことをするのも1回では終わらないことが多い。むしろ、私が気絶するまで付き合わされることもあるぐらいだ。

「昴って、ジムとか行ってたっけ…?」
「特別何かはしてませんよ。でも、それだけ付き合える名前もなかなかだとは思いますが」
「確かに、最初の頃よりかは気絶しなくなったけどね…」

いつだっただろうか。初めて昴と身体を繋げたときか、それともその次だったか。ちゃんと覚えてはいないけれど、私が早々に気絶したような気がする。そのときに比べればかなりマシにはなっただろうけれど、それでも昴が満足するまで付き合えたことはないと思う。

「ねぇ昴、」
「はい?」
「私より先に、消えないでね?」

腕を昴へと向けて伸ばせば、昴が何を言っているんですか、と言いながら私に腕枕をする。腕枕をした腕で髪を梳いて反対側の手で、私の頬に触れる。
死期が近いほど、性欲が強まる。そんな話を聞いたのは、いつだっただろうか。

「私が、貴方を置いて消えるとでも?」
「昴は、消えちゃいそう。いつか、突然」
「消えませんよ。貴方が、許す限りは」
「ホントかしら」

腕枕をする昴の上に乗って、私が彼のことを押し倒す。そのまま彼の言葉を塞ぐようにキスをすれば、昴の手が私の腰に触れる。なぞるように触れるその手つきに少しだけ息を吐いて、彼を受け入れるように今度は額にキスをする。

「名前、」
「ん、」

少しだけ熱を帯びたその声色に小さく返事をすれば、今度は彼が私の口を塞ぐ。隙間から舌をねじ込んで、食べるようなキス。この人の、全てが愛しい。全部、私だけのものにしてしまいたい。

「っ、ふ……ん、昴、」

じわり、じわりと侵食するように身体が熱を帯びていく。
昴に触れられたところから、ゆっくりと。
彼が私の身体を引き寄せて、そのままゆっくりと私の身体を押し倒す。額や瞼、頬などにキスをする昴に向けて腕を伸ばせば、彼の口角が上がる。

「好きよ、昴」
「えぇ、知ってます」
「昴は、言ってくれないの?」

昴が私の顔の横に肘をついて、距離が近付く。その距離に、私は頬を緩ませた。
目の前の彼が愛を囁いてくれることなんて今まで数える程度しかない。それぐらい、彼はあまりそういう言葉を言ってくれない。苦手なことは知っているけれど、聞きたいときだってあるのだ。

「昴は、私のこと好き?」
「好きですよ。誰でもない、貴方が」
「ん、私も」

私から昴の頬にキスをする。昴は頬だけじゃ不満だったのか、私が離れるとすぐに私の唇を塞いだ。
まだ、布団から抜け出せそうにはない。

2016.04.21