ドキドキするのは、吊り橋効果
重たい瞼を上げると、見たことはあってもあまり見慣れない天井。鼻につく、薬品の臭い。何が、どうなったんだっけ、と意識が飛ぶ前のことを思い出して、飛び起きる。刹那、自身の肩に走る激痛。
「っ……」
痛む肩を押さえて、耐える。ズキン、ズキンと痛むその肩が撃ちぬかれたことを思い出す。あぁ、仕事でポカやらかしちゃったのか私。どうやってここまで戻ったかは覚えていないけれど、誰が運んでくれたのだろうか。一応新人だし、てっきり見放されると思っていただけに有難い。
「……起きたのか、」
「うぇっ!?」
突然聞こえてきた声に、思わず変な声を発した。どうやったら音もなく突然現れることができるのだろうか。一応先輩?上司?そんなところになるから言わないけれど。
「傷、痛むか」
「あー…まぁ、それなりに、ですかね…」
実は結構痛いけれど苦笑いをしながら返事をする。暫くはまともに銃も使えないだろうし、お荷物だろうか。ホントによく見捨てられなかったものだ。
「コルンさんが、運んでくれたんですか?」
「お前の…銃の腕前、期待できる」
「そう、なんですか?」
「あぁ。だから、連れて帰った」
素質が無かったら見放されていた、ということでいいのだろうか。有難う御座います、と小さくお礼を言えば、私の頭を軽く押して私がバランスを崩す。このまま倒れたら肩が痛むかも、とぎゅっと目を閉じて衝撃に耐えようとしていたけれどその衝撃は無くて。恐る恐る目を開ければ、ギリギリのところでコルンさんが支えていたらしく、つい私は瞬きをしながらコルンさんを見る。
「す、すみません…!えっと、どうしたら、」
「寝ていろ。傷、痛む」
「うっ……。何から何まですみません…」
ゆっくりと横にさせられて、コルンさんを見上げる。起き上がったときに捲れ上がった布団を手繰り寄せようとすると、コルンさんにそれをかけられる。自分より目上の人間にこんなことさせて私は怪我が治ったら殺されるんじゃなかろうか、という気さえしてきた。
すみません、と小さく謝罪をすると、コルンさんは気にしなくていい、とだけ言って隣に座る。部屋を、出ていくつもりはないらしい。
「あ、の…?」
「…寝るまで、ここにいる」
「え…なんか、申し訳ないんですけど…」
「お前が怪我したの、俺の責任」
「えぇっ、だって、私が勝手に撃たれて怪我しただけじゃないですかっ…!」
勢いよく起き上がろうとして、制止させられる。一瞬傷口が痛んだけれど、今の私からすればそれどころではない。大人しく転がって彼を見上げれば、淡々と口を開いて続けた。
「あの場にいて、お前を護れるの、俺だけ。でも、護れなかった」
くしゃり、と頭を撫でられる。どうしてだろう。何故か、その言葉が妙にくすぐったくて、布団の中に潜り込む。顔が、熱い。
「…寝てろ。起きるまで、いてやる」
「はい……」
ポンポン、と子どもを寝かしつけるように、コルンさんにされる。妙に心臓が高鳴るその感覚が何か分かりたくなくて、私はぎゅっと瞼を閉じた。
2016.03.27