お預け


名前を呼ぶ声がして、目を覚ます。顔を少しだけ動かして辺りを見れば、お風呂から上がってきた陣平がソファーの肘置きに腰掛けて欠伸をしていた。

「随分寝るのが早いな」
「ん……ごめん、うたた寝してた」

身体を起こして陣平を見れば、彼が私の頭をくしゃりと撫でる。ちょっと転がって陣平がお風呂から上がって来るのを待とうと思っていたら、いつの間にか眠っていたらしい。

「疲れてるんだろ。今日は早めに寝るか」
「ん、」

陣平に向けて両腕を伸ばせば、彼は意味を察してくれたらしく口角を上げながら私の腋の下に腕を通して抱え上げた。そのまま陣平の頬にキスをすれば、ソレに返すように唇にキスをされる。

「そういえば陣平、明日から異動だっけ?」
「あぁ。飛ばされたくない部署だけどな」
「とかなんとかいって、可愛い女の子いて目移りしちゃうんじゃないの?」

ぎゅっと陣平にしがみついてそういえば、鼻で笑われる。捜査一課とかだったから女の子も少ないだろうか。
部屋の電気を消して、陣平に抱き上げられたままベッドへと連れて行かれる。ベッドにたどり着くとゆっくりと降ろされて、陣平もそのとなりに寝転ぶ。

「陣平、」

腕を伸ばして、陣平の名前を呼ぶ。彼は何だよ、と私を見て仕草の意味を察したらしく、呆れたように笑いながら私の身体を引き寄せた。
私がぎゅっと彼に抱き付けば、陣平は私の髪を梳いていく。

「浮気したら、許さないからね?」
「俺は遊びに行くんじゃないんだよ」
「ふふふー。あ、でも死んだらもっと許さない」
「今のとこの方が危ないだろ」

リップ音をさせながらキスをされて、私の頬が緩む。私の家に陣平がいるのは久しぶりで、少しだけ変な感じだ。私から誘うようにキスをすれば、彼もそれに乗るようにキスをして、甘ったるいキスに溺れているといつの間にか視界は陣平と天井だけになる。

「ふ…んん、だめ、」
「誘ったのは名前だろうが」
「でも、ダメ。明日もお仕事だもん。キスなら、いくらでもいいけど」

腕を伸ばして、陣平の頬に触れる。陣平が右手でその手を取って、再度私の口を塞いだ。何度も繰り返されるうちに苦しくなって、酸素を求めて小さく口を開けば待っていたと言わんばかりに陣平の舌が口内を犯していく。肩を掴んで抵抗をするけれども敵わなくて、その手は陣平に取られて頭上で押さえ付けられた。

「名前、」
「やっ、だめだって…っ、ん!」

低い声で名前を呼ばれて、ぞくりと身体が震える。そんな声で呼ばれたら、もっと欲しくなってしまうのに。
お互いの唇が離れた瞬間にと息を吐いて、その間を銀色の糸が繋いでいた。それを拭う陣平の姿が色っぽくて、彼を見上げる。視線が交わると、陣平は少し呆れたように笑って、私の額にキスをした。

「続きは明日、だな」
「ん……」

私の上に覆いかぶさる彼の背中に腕を回して、服を掴む。さすがに彼もこれ以上はダメだと思ったのか、再度私の額にキスをして隣に転がった。
眠いんだから寝ろ、という彼の言葉と共に抱き寄せられながら背中を叩かれて。私がさらにぎゅっと抱き付けば、私の頭上で彼の頬が緩むのを見ながら瞼を閉じた。

2016.05.17