篠突く雨の中

 
「雨、結構酷くなってきましたね」
「警報も出ているみたいだからな」
「えー…」

携帯を扱いながら、ソファーに座る秀一さんが言った。多分、天気予報か何かを見ているのだろう。確かに風も強くなっていて、梅雨時期とはいえなかなか酷いものだろう。
雨が降っている以上どこか出ようにも出にくいし、そもそも秀一さんはあまりウロウロしない方がいいのだろう。多分。

「…暇か?」
「え?」

軽く部屋の掃除でもしようかと思って、細々したところを片づけていると、秀一さんが私に尋ねた。まぁ暇だし掃除してますね、と言えば秀一さんは少しだけ眉間にシワを作る。そのまままるで興味が無いと言わんばかりにホー…と呟いて視線を携帯へと戻した。

(………あぁ、)

そういうことか、と1人で納得をして口角を上げる。普段は散々人のことを甘やかしているわりに、珍しい。そう思いながら、掃除していた手を止めて秀一さんを見る。相変わらず視線は携帯で、仕事のことなのか何かを確認しているようにも見える。

「秀一さん」

秀一さんに近付いて、彼の名前を呼ぶ。多分、私の表情筋は緩んでいるのだろう。秀一さんが顔を上げて私を見上げるのとほぼ同時に、私は秀一さんの膝に座る。一瞬秀一さんの動きが止まったけれど、すぐに携帯を置いて私の身体を自分の方へと引き寄せた。そのまま後ろからお腹に手を回されて、首筋にキスをされる。

「珍しい、ですね?秀一さんが私を呼ぶのを躊躇うの」
「片づけをしているのに、呼ぶのも悪いだろう」

寄り掛かる私の顔を上に向かせて、返事はいらないと言うように口を塞がれた。いつもとは違う角度からされるソレに狼狽えていると、唇が離れるやいなや彼の口元がわずかに上がった。

「身体、こっちに向けろ」
「ん、」

秀一さんに言われて向き合うように座りなおせば、噛み付くようにキスをされる。囁くように低い声で名前を呼ばれ、耳元に口付けられて。首筋も、痕が残らない程度にキスをされて、這うように移動する。
お互いの熱を奪い合うようにキスをして、秀一さんは一度私を抱えてソファーに横たわらさせた。

「雨の日は、仲良くしたい感じですか?」
「嫌か?」
「嫌だったらもっと拒否してます」

私の頭の横に肘を付いた秀一さんが、その手で私の頭を撫でる。その心地よさに身を委ねて、私も秀一さんの頬に手を伸ばした。
どちらからともなく、お互いがお互いの額や頬、耳元、至る所に口付けていく。視線が合うと笑い合って、手を絡ませる。

「ソファーだと、ちょっと狭いのが難点ですね」
「…いや、この狭さがいいんだろう」

秀一さんの手が、私の身体に触れる。服の上から、煽るように。

「ん…っ、」

服の上から触れられる度に、声が漏れる。まさかここでするつもりなのだろうか、と秀一さんを見上げれば、少し触るだけだ、と言われた。

「それとも、」

秀一さんの手が、移動する。脚を割って入られて、中心をなぞるように触れられた。それに合わせるかのように、私の身体がビクリと揺れる。

「強引に、開いて入れた方がよかったか?」

耳元で、低い声で囁かれる。その言葉の意味が分かると同時に、私の顔に熱が集まって、思わず息を飲む。それを隠す為に顔を手で覆うも、秀一さんの手によってその手は取り払われる。隠すな、と言われたけれど恥ずかしくて、首を左右に振る。けれど、秀一さんは私の両手首を片手で押さえて、もう片方の手で無理矢理視線を合わせさせた。

「っ、」

交わる視線に、余計に顔に熱が集まるのが分かった。ふいに秀一さんの顔が近づいて、リップ音をさせながら額にキスを落とされる。恥ずかしさで緩みそうになる涙腺を押さえているのに気付いたのだろうか。秀一さんに一旦起き上がらさせられて、そのままさっきとは反対向きに、秀一さんが下になるように2人で転がる。
小さな子どもをあやすように頭を撫でながら、背中を規則的に優しく叩く。

「…秀一さんばっかり余裕あって、ずるいです」

ぽつり、と呟いた言葉に、秀一さんが呆れたように息を吐く。

「あるわけないだろう、そんなもの」
「……ないんですか?」

いつも、少し意地悪そうに笑みを浮かべて私の様子を見ているというのに。秀一さんを見上げると、待っていましたとばかりに軽くキスをされる。

「こう見えても、自分を抑えるのに必死だ」

困ったように笑みを浮かべる秀一さんを見上げて、私は思わず頬を緩めた。