温もりの中で微睡む

 
重苦しい身体。痛む腰とお腹。鬱々とした不快感。確かに酷い時には薬に頼ることはあったけれど、ここまで酷いのは初めてではないだろうか。身体を動かすことでさえ嫌で、朝からずっとベッドの中だ。幸いなことは、秀一さんがいないことだろうか。

(ホントはあと2日ぐらい秀一さんが来ないでくれたら有難いんだけどなぁ……)

自分の役目は無い、と言わんばかりにうんともすんとも言わない携帯にちらりと視線を向ける。もし来ないとしたらとっくに連絡は来ているだろうし、恐らくは来るのだろう。連絡を入れて何か買ってきてもらおうか、と一瞬考えたけれど、それもなんだか申し訳ない。

(冷蔵庫の中、何があったっけ…)

気怠い身体を起こして、頭の中で冷蔵庫の中に何があるのかを思い出しながらキッチンへと向かった。

 + + +

(疲れたもう知らない死ぬ……)

ライフはゼロですと言いたくなりつつ夕飯を作り終えたのでソファーに転がる。基本的に痛みというものが嫌いなのだけれど今回は本当に酷い。ちょっと苦手な男の人が目の前にいたらとりあえず一発殴っておきたくなる気分だ。安室さんとか。
転がったまま何もする気にもならずにだらけていると、ふと聞こえてきた玄関の開く音。秀一さんが帰ってきたことにバッと身体を起こすと視界がぐらつく。

「っ……」

頭を抱えて、視界が落ち着くのを待つ。辺りがぐらついて、じわじわと視界が狭まるような何とも言えない感覚。血が、足りないのだろうか。

「名前?」

玄関から中に入ってきた秀一さんが、私の名前を呼んだ。視界が落ち着いてきたこともあって顔を上げて秀一さんの名前を呼ぶ。私と視線が合うと同時に秀一さんの眉間にシワが寄せられて、私は首を傾げた。

「顔色が、悪いな…」
「そう、ですかね?」

秀一さんは心配そうに私の前に膝を付いてくしゃりと頭を撫でる。顔色はさすがに確認してないです、と言えば呆れたように息を吐かれた。熱は?多分無いかと。測ってはないのか。ずっと寝てました。そんなやり取りをして、秀一さんの手が私の頬に触れた。

「体調が悪いなら、大人しく寝ていろ」
「夕飯作ってました」
「俺のことは気にしなくていいから、身体を治すことに専念していろ」
「はーい…」

未だ呆れた様子の秀一さんに、横抱きにされる。多分、向かうのは私の部屋なのだろう。器用に扉を開けて、私をベッドに横にさせる。くしゃくしゃと頭を撫でて、何なら食べれそうか、と聞かれる。

「食欲ないです…」
「食べないと薬も飲めんだろう」
「や、それは大丈夫、かと…」

薬を飲んでもいいけれど、正直生理痛は痛みが出てからだと効かない。生理痛なんです、と言えば、一瞬秀一さんの動きが止まった。普段はそんなに重くないし、そもそも男性だからそういうことだと考えていなかったのだろう。

「してほしいこと、あるか?」
「…いいん、ですか?」
「男は、代わってやれんからな」

私が転がるベッドに腰かけて、頭を秀一さんが優しく撫でる。ただ、してほしいことと言っても思いつくのはあまり無くて。体調が悪いといつもより甘えたくなる、ということぐらいだろうか。ただ、ちょっと言いにくい。

「…どうした?」
「う……あの、添い寝、とか…」

駄目、ですか。その言葉に、秀一さんが肩を震わせて笑う。まさか、そんな言葉が出てくるとは思っては無かったとでもいうようだ。

「そのぐらい、いつでもしてやる」

フッ、と笑って、秀一さんが私の隣に横になる。軽く頭を持ち上げられて腕を入れられて、腕枕をされた。秀一さんにそっとすり寄れば、聞こえてくる心音が心地よくて瞼を閉じる。

「何か、食べたりしなくていいか?」
「ん…このままが、いい」
「そうか」

腕枕をされている方の手で頭を撫でられる。規則的なその動きに身を任せて、意識を手放した。

2015.07.15