ちったいうさぎ


どちらに似ているか、と聞かれたら。見た目も性格も、それぞれよく混ざり合ったものだと答えるだろう。目つきが俺に似なくてよかったと思ったのは、否定しないが。

(それにしても……)

ちまちまとした作業をするのが好きなところは、名前に似たのだろうか。今の子どもの名前の場合、好き好んでやっているわけではないのだろうが。
目の前でサラダの中からちまちまと嫌いな人参を避ける子どもの名前。ある意味その労力に尊敬するものがあるかもしれない。

「そんなにちまちま避けると、後で食べるのがツラいぞ」
「子どもの名前のじゃなくて、うさちゃんのごはんなの」

子どもの名前の隣に座る、うさぎのぬいぐるみを指差す。確かにうさぎは人参を食べるが何故そういうことに使うのか…。内心呆れながら、どうやって子どもの名前が嫌いなソレを食べさせるか頭を働かせる。

「うさちゃんが食べない分は子どもの名前が食べるんだが、ちゃんと食べれるか?」
「……やだ」

ぷい、とそっぽを向く子どもの名前。ここではいそうですかなんて言って普通に食べるなら避けたりしないかと一人納得をする。苦味の強いピーマンやゴーヤー等じゃなく何故人参なのか…。苦味が駄目というなら本能的なものも関係してくるので仕方がないとうなずけるのだが。人参に苦味はあるにはあるが、ピーマンに比べれば少ないだろうに。

(母親というのは、想像以上にすごいな……)

親になってみて分かる苦労とは、こういうものなのだろうか。名前と食べているときには、子どもの名前が食べ残しをしているのは見たことがない。あの手この手でうまいこと食べさせているのだろう。
小さく息を吐いて、隣に座っていた子どもの名前を自分の膝の上へと座らせる。持っていたフォークを子どもの名前の手から俺の手に持ち帰る。

「ママと食べるときは、いつも食べているんだろう?」
「むぅ………」
「こら、剥れるな。今日のご飯は、ママが作ってくれたんだろう?」

甘えるように、ぎゅっと抱き着いてくる子どもの名前の頭を撫でる。こういう甘え上手なところは一体誰に似たのだろうか。
フォークに皿の上に残っていた人参を刺して、子どもの名前の口元まで運ぶ。子どもの名前はじぃ、っと睨みつけるように、その人参を見ている。

「コレを食べ切れたら、きっとママも褒めてくれるぞ」
「……ほんと?」
「あぁ」

再度子どもの名前は人参を見て、ぱくりとフォークに食らいついた。暫く口をもぐもぐと動かして、飲み込む。その顔は涙目で、恨めしそうに皿に残る人参を見て、俺を見上げる。

「もう嫌か?」
「……食べる」

ぎゅっと俺の服を握って、子どもの名前自身が動く気配は無い。給仕をしてほしいのだろう。嫌い、と言っても恐らく食べなくていいなら食べたくない程度のものらしく、もう一度人参を口に運べばぱくりと食べる。涙目なのは、そのままなのだが。

「この一口を食べたら、口直しがあるぞ」

最後の一口をそう言いながら子どもの名前の口元に運ぶ。口直し、というのが何なのか察したのだろうか。今までよりもスムーズにぱくりとそれを口に入れた。

「うさちゃん、なんで人参好きなのかな……」
「うさぎは、そういう生き物なんだ」

未だ涙目な子どもの名前の頭をくしゃりと撫でて、抱え上げる。確か、冷蔵庫に名前が作ったプリンがあったはず。何かあったらソレ使って釣っていいから、なんて言っていたから有難く使わせてもらおう。

「パパ、口直し!」
「あぁ。ママの作ったプリンがある」
「ぷりん!」

パシパシと俺の胸元を叩く子どもの名前の頭を再度撫でて、抱っこしたまま冷蔵庫に向かった。

 + + +

「じゃあ全部食べたんだ」
「あぁ。プリンも食べたけどな」

食べてもらわないで残るよりいいよ、と言って名前は俺に寄り掛かる。その身体を引き寄せて膝に座らせれば、嬉しそうに笑みを浮かべた。

「私結構苦戦してるんだけどなー…」
「苦戦?」
「うさちゃんこうやって持ってね…」

名前は両手でぬいぐるみを持つようなポーズをして、こうやってうさちゃんでお願いのポーズをするの。そう言って手を動かす。

「『うさちゃんは子どもの名前ちゃんにも人参食べてほしいなー』って言ってお願いする…って何笑ってるの!」
「いや、悪い…。まさかそんなことしてるとは思ってなくてな…」

毎回そんなことをしているのかと思い肩を震わせて笑うと、名前がパシパシと俺を叩く。自分で結構恥ずかしいことしてる自覚はあるんだよ、と若干拗ねるように言った。機嫌を取るように悪かった、と言って額にキスをしてやれば嬉しそうに抱き着いてきたので無意識に口角を上げた。