シュシュに口付け
「随分と買い込んだな…」
「私もちょっと思いました…」
家に帰ってきて、買ってきた荷物を玄関に置いた瞬間秀一さんに言われる。ちょっとセールやってるし、と思って服を見たのが駄目だった。元の世界ではそろそろ年齢的に厳しいよねってなっていた可愛い服が今の年齢なら問題なく着れるということでついつい買い過ぎてしまった。前と違って車で買い物ができないのが難点だけれど。
「服か」
「まぁ…。つい安かったんで…って、あ!そっち駄目です!」
ひょい、と秀一さんが持ち上げた袋。私の言葉も空しく彼はその袋の中身を見た。…見た、というより見えた、なのだろうけれど。見えてしまったその中身に秀一さんは一瞬固まって、その袋から視線を逸らしつつ謝罪を述べて私に返す。
「まぁ、置いた私も悪いんで…」
中に入っていたのは、下着類。別に下着を見られるどころかそれ以上の行為もしているけれど、何となく気恥ずかしい。着ている姿じゃないしいいか、と小さく息を吐いて誤魔化す。
「シュシュとお揃いって書いてあったからついいっぱい買っちゃったんですよね」
「シュシュ?
「えーっと…いわゆる髪留めですね」
髪の毛をひとつにまとめるときに使う、ゴムみたいなものです。私の説明を聞いてもいまいちピンとこないらしく、首を傾げている。確かに女の人からしたらわりと使うし使わないとしても知っている人は多いだろうけれど、髪をまとめることがあまりないであろう男性からしたらなじみのない言葉かもしれない。秀一さんなら余計に、だ。安室さんとかなら、知ってそうだけれど。
百聞は一見にしかず。そう思って、シュシュをひとつ取り出してコレですよ、と見せた。
+ + +
秀一さんの手が、隣で座っていた私の高い位置でひとつに結い上げた髪に触れた。髪はするりと指の間を通って、重力に従うように流れ落ちる。
「どうかしました?」
「いや、珍しいなと思ってただけだ」
普段はあまり結い上げないだろう、と言われてクスリと口角を上げる。最近暑くなってきたから気分転換です、とそれっぽいことを言ってみるけれど、本当は違う。秀一さんがシュシュを知らなさそうな素振りを見せたときに思いついた、イタズラの為だ。
秀一さんは私のことを引き寄せて、横抱きにされる。膝の上へと座らされた私は彼に寄り掛かりながら、笑みを浮かべる。
「お揃い、なんです」
私の言葉に、秀一さんは首を傾げて。けれど、すぐに私の言葉の意味を理解したのだろう。一瞬目を見開いたかと思うと、片手で自身の顔を隠してもう片方の手で、私の頭を荒っぽく撫でた。
秀一さんから大きく息を吐く音が聞こえて、彼が呆れるのが分かった。けれど、怒ったりしない辺り私は随分と甘やかされているのだろう。
「お揃い、な」
落ち着いたのだろうか。秀一さんは顔を隠すのはやめて私を抱きしめるように腰に回していた腕の力を強められる。空いている方の手で髪を何度か梳いて、シュシュに触れた。
「秀一さん…?」
動きを止めた秀一さんの名前を呼んで、見上げる。どうかしたんですか、と私が言うよりも早く秀一さんは動きを止めていた手を動かして、私の顔を持ち上げて顔を上へと向かせた。そして、それとほぼ同時に私は自身の口を塞がれる。
驚きで開いた口から、何も言うなというように深くキスをされる。その動きから逃げようと身体を引き離そうと試みたけれど、私が身体を動かすより一瞬早く後頭部が抑えつけられて逃げることが出来なくなってしまった。さらに、逃がすかと言わんばかりに腰をしっかりと掴まれる。
「っ、ん……」
くぐもった声が、部屋に響く。秀一さんの手が髪に触れて、シュシュを外された。シュシュで軽く結い上げていただけのソレは簡単に外されて、髪が流れ落ちる。
「見ただけで、下着がわかるというのも面白いな」
フッ、と笑って、また私に口付ける。熱を持ったソレは私をぐちゃぐちゃにして、唾液が落ちる。秀一さんはそれを舐め取って、また笑った。
「確認を、させてもらうぞ」
秀一さんはキスをしながら私のことを押し倒して、馬乗りになる。今の私と同じ下着の色をしたシュシュにキスをして、煽るように彼の指が私の身体をなぞった。
2015.07.17