それは、氷解するようだった

 
恋人がいる、という話は聞いたことが無かった。高校でもあまり浮ついた話は無いらしい。ただ、園子が前に年上の男の人と一緒だったのを見たことがある、とは言っていたが。
俺としては前に名前を家に送ったときに現れたアイツの保護者ではないかと思ったのだけれど。

(保護者、ねぇ……)

俺の記憶が正しければ、アレは赤井さんだったのではないだろうかと思う。ただ、FBIである赤井さんと名前がどう繋がるかが分からない。
確かに前に灰原にヒントと称してジンに目を付けられているとか証人保護プログラムを蹴ったとか薬を飲んでないけど云々言っていた。けれど結局アレは本当のことではあるけれどあまりにも疑っていた俺らへの挑戦で、組織関係の人間では無かったのだけれど。

(待てよ?そういえばこの前……)

雪のちらつていた冬の日。蘭の言葉によって赤井さんがFBIと知ったあの日。確かに、名前は赤井さんと一緒だった。今の今まで、完全に忘れていたのだけれども。
でも人の恋路にどうこう言うつもりはないし、あの2人なら大丈夫だろう。1人で考えても仕方のないことだ。そう思って、この考えるのをやめた。

 + + +

「……知らなかったのか」
「そうかなとは思ってたけどね…」

赤井さんはなんてことないような顔をして、俺を見ていた。どうやらFBIの人は知っていたらしく、俺もどこかから聞いて知っていると思っていたらしい。
苦笑いを浮かべながら、恥ずかしそうに赤井さんの胸に顔を埋めて悶えている名前を見た。

「そこまで恥ずかしがることでもねぇだろ…」
「事実を知られたことより顔も知らないような人ならともかく小学生に見られたとかホントに無理立ち直れない…!」
「ハハ……」

苦笑いをして、名前から視線を逸らす。確かに俺も驚きはしたものの別に気にすることでもないだろう、ぐらいの程度だ。驚きは、したが。

(最近は赤井さんもずっとこっちにいたし仕方ねぇよなぁ…)

名前はここまで関わってしまった以上俺らと行動を共にすることも増えたけれど、大前提として名前はFBIに保護される側の人間だ。ここに泊まるなんてことはないし、そもそも本来であればあまりここに出入りするのも危ないのだろう。勘の良さを買われているのだろうが。

「名前、」
「……やだ」

赤井さんが、名前の名前を呼ぶ。無理無理無理コナン君の顔見れないと駄々をこねる名前に、赤井さんが名前にだけ聞こえるように何かを言った。その瞬間、名前は勢いよく赤井さんから離れる。

「それでコナン君は何しにきたんだったけ?」

まだ名前は少し恥ずかしいのか、それとも言われた言葉からなのか。それは分からないけれど、名前の頬は若干赤い。
開きなるように俺に聞いてくる後ろでは、赤井さんが肩を震わせて笑っているのが見えた。

(なんつーか…やっぱり赤井さんの方が一枚上手なんだな…)

ちょっと相談があったんだよ、と言えば名前は納得したように赤井さんを見る。赤井さんは俺を見て、口角を上げた。