One morning,

ぱち、と目を覚ます。ああ、朝だ。新しい今日が始まった。とても素敵なことだけど、朝が弱いマナにとっては、少しだけうんざりだったりする。自分の体温ですっかりと居心地の良い場所となったベッドの中で、もぞもぞと身体を捩らせた。
扉の向こうから、階段を上る足音が聞こえてきた。マナの部屋は2階だ。くるな、くるな、そう思うマナとは裏腹に、足音はちょうどマナの部屋の前で止まる。マナは布団を頭のてっぺんまですっぽりとかぶった。

「マナ。時間だ。ほら起きて」
「…あとごふん」
「今日は何回その言葉を言うつもりなんだい?ほら起きた起きた」

部屋に入ってきたのは、予想通りの人物だった。布団を無理矢理引き剥がされたマナは、朝の眩しさと目の前の人物へ感じる恨めしさに、思わずぼさぼさの髪に埋もれた顔を顰めた。

「ひどい頭だな、昨日ちゃんとブローしたのかい?」
「…してない」
「君も少しは気にしたらどうだい?女の子でしょ?ほら、まず顏洗って髪をとかして。そしたら…」
「『朝ご飯が待ってるよ』でしょ?いいかげんもう聞きあきた」

マナは鬱陶しいとでも言うように彼の言葉を遮った。すると彼は怒ったようにマナの顔を見る。

「ただの朝ごはんじゃないさ」

マナはうんざりとしたような顔になった。

「おいしいあさごはん」
「美味しいのは当たり前さ!」
「リリーが作るおいしいあさごはん」
「足りないね」
「愛するリリーが作るおいしいあさごはん!もういいよ、毎日毎日言わないと気がすまないの?」

怒るマナの何が面白いのか、目の前の相手は声をあげて笑いはじめた。もともとムスッとしていたマナの顔が、さらに不機嫌になる。

「っはは、ごめんごめん。でももう目が覚めだだろ?早くしないとリリーも怒ってしまうからね!もちろん歯磨きも忘れずにね」

マナは返事の代わりにのそのそと布団から這い出た。目の前の人物はその様子を見て部屋を出ていく。マナはふあぁ、と大きく欠伸をした。

「あ、あと」
「?」
「おはよう、マナ」
「…おはよう、ジェームズ」