03.異世界プロパガンダ



培った格闘技や医学が何も役に立たず、私の強さも露見せずに済んでいる平和な生活を送っていたある日。

中学校に入学した今も、例のごとく
@キャラとは死んでも関わるな
A余計なことは喋るな
B自分の身は自分で守れ
の人生三箇条を律儀に守り、特にAのおかげで周りからは本性とはだいぶ異なった物静かな性格と認識された。

隣の席の人は入学早々に先輩と喧嘩をしてここ2週間くらい停学しているためいない。噂によると3年生の先輩3人に対し1人で返り討ちにしたそうだ。
格闘技をする者としては見てみたい気もするが、なるべく関わりたくない人種である。

今のところ人間関係も割とあっさりしてて面倒臭くないし、何しろキャラとは一切関わりがない。
ここまできたら結構順調に人生歩めてると思う。

嬉しくなって少し鼻歌気味に帰り道を歩く。
今日は道場内の空手の試合で男子高校生相手に勝利することが出来た。格闘技の手応えも中々だ。

そうして気を抜いていたのがいけなかった。


「中坊のくせにイキがってんじゃねえっつーの」
「いいから金出せや。持ってんだろ?」


何やら不穏な言葉が聞こえてきて、無視すればいいものの何を血迷ったか、私は声のする方に足を運んでしまった。今思えばこれ程馬鹿な行動はなかった。私はこの時のことを一生後悔することになる。

見えたのは、公園で不良高校生が集団リンチしてる様子。
しかもよくよく見れば、リンチされてるのは中学生のようだ。

よせばいいのに、私はそこで思わず声をかけてしまった。


「あの、何してるんですか」


それまで男子中学生の方に向いていた複数の視線は、一気にこちらに向く。
一方リンチされてた男子中学生の方は、見るも無残にボコボコにやられていた。


「あ?……ってなーんだ、かわい子ちゃんじゃん。何、コイツの知り合い?こんな奴ほっといて俺らと遊ばない?」
「知り合いではありませんが、見過ごせません。集団リンチですよね?警察呼びますよ」


誘いをガン無視して警察を呼ぶという発言にイラついたらしい。リーダー格の高校生が舌打ちをしながらこっちに近付いてきた。
なるほど、体格は良さそうだ。これじゃあ成長期入る前の中学生じゃ敵わない。


「…チッ、あのさあ…君、自分の状況分かってる?口の聞き方には気をつけろよ…じゃないと…コイツみたいになるぜ?」


雲行きが怪しくなってきた。
実は既に警察を呼んでいるが、到着するまでにやられたら元も子もない。

しかし、咄嗟に私の口から出た言葉は、彼らを挑発するものだった。


「忠告ありがとうございます。でも、そうなるのはあなたたちですよ」


もちろん、女子中学生対男子高校生5人の無謀なデスマッチが始まったのは言うまでもない。