ゼラニウム



真っ赤なコートが金色に映えて、私よりもずっと大きな彼は、私にとってヒーローだった。

「だって、痛いのは嫌じゃないか。」

そういう彼の体は、誰よりも傷ついて。
そういう彼の心は、誰よりもすり減って。

優しい青い瞳がゆるりと下がり、楽しそうに笑う姿を見た私達の『トモダチ』が、

「そんな顔もできるんか。」

なんて呆れたように、でもどこか嬉しそうに笑っていたのを知っている。
その時の私は、彼がずっと、今まで生きてきた時間よりも長く、そうして笑っていられますようにと、願っていたのを知っている。

神様、いるなら見てるでしょう?

こんなに傷ついているから。
こんなに叫んでいるから。
こんなに泣いているから。

たった一人で戦って、傷ついて、やっと出来た『トモダチ』も失って。
大事な大事な、家族も失って。


神様、ねえ神様。

どうか私のヒーローをこれ以上、苦しめないで下さい。


ゼラニウムのような真っ赤なコート。
私にとってのあなたのような。あなたにとっての私達のような。

「ヴァッシュ、お願い。」


どうか生きて、幸せになって下さい。




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