後悔先に立たずとはこの事。
固まった体、乱れる鼓動。どんどんと下降していく体温。冷めていく体と反対に握りしめた指は先がジンジンと熱くなる。
慣れ親しんだはずのその場の空気に徐々に亀裂が入るのがわかる。

そろり……
彼の表情を捉えた時、頭に浮かぶのはただひとつ。

-----------言うんじゃなかった。





---2週間前
「え、ドッキリ企画ですか?」
「そう、うちの会社内のカップル間でね。どうかな?」

マネージャーの真嶋さん伝いに提案された企画は、DYNAMIC CHORD社が運営する番組の一角で検討されているもの。しかも伊澄社長が直々に考えたものだと言う。

社長が企画したって聞いて、断る人なんているのだろうか、浮かんできた疑問に答えるように浮かんで来た、とある友人の良い笑顔に若干の苦笑いを零しながらこちらを伺う真嶋さんに返答をした。

「私は構いませんけど…この話が来てるってことは私が仕掛け人なんですよね?ドッキリの内容って決まってたりするんですか?」

仕事と言われればある程度のことはやる気ではいるし、やらなければいけないと思う。でも、あまりに不謹慎なものや内容によっては考えなければいけないのも事実。…社長に限ってそんな無茶はしないだろうけど、一応。一応確認しよう。なんせウチの事務所は時々突拍子もな「別れ話です。」



「………なんて?」
「別れ話です。」



…………………いや、無理でしょ。別れ話を?私が?時春さんに?するの?無理でしょ(確信)バレるでしょ。何より万が一バレなかった時が怖い。

「無理がありませんか。それにもし…もし信じてしまった時が…」
「それについては大丈夫です、安心して下さい。城坂さんと真波さんが協力してくれます。」
「何も安心できないんですがそれは!」

依都さんとひなせちゃん何やってんだよ。何も大丈夫やないやんけ、むしろヤバさ増したわ。

「流れ的には麗さんが時春さんに別れる馬を伝える、反応を見た後城坂さんと真波さんが『ドッキリ大成功!』の札を持って登場します。」
「ええ…ほんとにやるんですかこれ。」

真嶋さんはあくまでも話を進める気でいるらしい。
私だって仕事なら頑張りたい。せっかく最近波に乗り始めたのだ、このチャンスを活かそうとも思う。
でも、冗談としても優しいあの人に嘘をつくだなんて。それも、嘘の内容が内容だ。傷付けてしまわないだろうか。もし、そう言えば傷付いてくれるのだろうか。

「…わかりました。折角頂いたお仕事ですから、やらせて頂きます。」


結局私は、渋々と返事をするフリをした。

時春さん、年上の恋人。