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この場所に来てからどれくらいの時間が経ったか分からない。

焦って周りの様子を窺っても暗闇の中では満足に頭は働かず、恐怖から目を瞑りしゃがみ込んでいても時間が経つだけ。不安と混乱で頭はぐちゃぐちゃで、段々と疲れがたまって……すっかり途方に暮れてしまった。時間だけがゆっくりと過ぎていく中で段々と一つの考えが思い浮かぶ。
―――きっと、このまま時間が経っても、元の場所には帰れない。

『(これから、どうしたらいいんだろ……。)』

ぼんやりと、考えを巡らせていると暗闇に目が慣れたのか周囲の様子が分かるようになってきた。

どうやら、ここは森のような場所らしい。生い茂る木々は月明りに照らされ、足元には草が生えている。
『(…さっきはこれを踏んだんだな…あたり一面草だらけ……ん?)』

ガサガサと草を踏み鳴らしていると、草の中で何かが光った。
しゃがみ込んで、地面を撫でてみると少し大きな石のようなものが落ちている。

『うわ…綺麗…。』
拾い上げてみると、それは不思議な色をした石だった。息をのむほど、美しい石。
暗闇の中でさえきらきらと輝くそれをもっとよく見たくて、僅かな月明りを求めて夜空へかざした。石の中の反射する光が夜空の星と混じる。星空を写し取ったようでやっぱり綺麗…。
…少し元気が出たかもしれない。

ふ、とひとつ息をつく。
焦っても、元の場所には帰れなかった。そもそも、ここがどこかかも分からない。どうすればいいかも…分からない。
でも、きっとこのままで何もせず待っていても何も良くはならない。
それなら、分からないなりに何かした方がいい気がする。せめて、動けるうちに。動く気があるうちに。
朝を待って、移動してみよう。
私は依然、輝きを放つ石を上着のポケットにしまった。






ガサガサガサガサガサガサ

『!!!!!』

あの後、朝が来るまで休もうと、木を背もたれに座り込んでいたのだが、気疲れもあってか眠っていたらしい。
あたりはまだ暗いから、朝が来たわけではなさそうだけど……今の音は???
ゆっくりと立ち上がり、あたりを見回す。

ガサガサガサガサガサガサ!!!!!!!

…まただ。さっきよりも近い場所で音がする…。ここは森だから動物かもしれない。森…動物…熊?!
混乱した頭では体はうまく動かせない。そうしている間にも音は止まず、こちらにどんどん近づいて来ている。
音の聞こえる方から、聞いたこともない不気味な声が聞こえてきた。これは、ほんとにまずいのでは?

ついに音はすぐそこまで来て、もうだめだ…、と目を瞑った瞬間。

「―――――。」

低い、つぶやくような声と、ドサッと大きなものが落ちるような音がした。

―――衝撃はいつまでたっても来ない。辺りはすっかり静かになった。
恐る恐る目を開けてみる。
『え…………。』
目の前に、人の大きさを優に超える大きさの生き物が倒れている。でも、私はこんな生き物知らない。
こんな生き物、いるわけない。
なにこれ、こんなの、まるで……ゲームのモンスターみたいな……そんなの………。





「お前、ここで何してる。」






唖然とする私に声を掛けたのは、おおよそ日本人ではないような容姿をしたひとりの男性だった。








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