01.呼び声
―――きて。―――――起きて。
声がする。馴染みのない、やわらかで優しげな声。
揺蕩う意識の中で、何度も呼びかけている。少女の優しい声が、また、誰かに呼びかける。
―――おはよう。私の声、聞こえる?
微睡の中、ふとこの声は自分に向けられたものではないかと声に意識を傾けると、声は心なしか嬉しそうな音を含んだように思えた。
―――おはよう。
―――思い出してみて…記憶の中に漂う自分という姿を。
…自分の姿、性別、名前、声に従ってひとつひとつに意識を傾け、思い出していく。
自らの姿はぼんやりとだが思い出せる。…性別は、女性だ。名前は…"ツアレ"。
――――そう…それがあなたの姿…。
自分について思い出そうとするうちに、頭が明確な思考を始めるのが分かった。思い出せる情報が少なすぎる…というよりは随分と不明慮であることに違和感を覚えた。記憶に靄がかかっている。……それに、私が従っているこの声の主は誰なのだろう。聞き馴染みのない声なのに、声の主は私のことを知っているようだ。…少なくとも今の私自身よりよっぽど"私"を知っている、そんな感覚がする。
思考を重ねるうちに意識が覚醒に近づいていく。
――――やっと…会えるね。
声に導かれ、意識が清明となる感覚と共に次第に視界に光が差し込むのが分かった。…酷く眩しい。
――ああ、なんだか、随分と深く眠っていた気がする。