02.目覚め
目覚めて初めに視界に入ったのは、霧に囲まれた不思議な空間だった。「(…ここは?)」
ゆっくりと顔を上げる。
「!」
目前に小柄な人影があるのに気づいた。褐色の肌に長い白髪。少女とも、女性ともとれる容姿をしている。彼女はこちらに微笑みかけているようだった。
「やっと…会えたね。意識はしっかりしている?」
私に問いを投げる声は微睡の中で私に呼びかけていた声だった。
『……意識に問題はないよ、大丈夫。』
問いに答える私に、彼女は言葉を続ける。
「あなたはこれから、不死の存在…
『吸血鬼…。』
「吸血鬼として生きるために知っておいてほしいことがあるの…よく聞いて。」
告げられた言葉をただぼんやりと聞く私を見て、彼女はゆっくりと言葉を続けた。
「吸血鬼の血は【ブラッドコード】という特別な力を宿す…。それぞれのブラッドコードが持つ力は【
「…練血を使用するには特別な血…自我を失い、化け物となり果ててしまった吸血鬼…【
ブラッドコード…練血…堕鬼…彼女から発せられる言葉をただただ耳に入れる。自覚はないはずなのに、それらの理解は容易だった。
彼女はさらに言葉を続ける。
「本来ブラッドコードは一人に一つ……だけどあなたは違う。あなたが元々もっていたブラッドコードはすでに壊れ、消失してしまった…。だからこそ、無限の可能性がある。あなたは複数のブラッドコードを切り替えることのできる特別な存在。」
『壊れた…?切り替え…………ごめん、よく分からない…。』
困惑する私に、彼女は「大丈夫、切り替え方を教えるね。」と微笑んだ。
彼女が言うには、私の中には三種類のブラッドコードが存在するらしい。私のブラッドコードは消滅してしまったと言うのに、このブラッドコード達はいったいどこから来たのだろうか…そんなことを考えながら彼女の言葉に従い、切り替えを試みる。と、確かに先ほどまでとは異なる感覚がする。不思議な感覚だ。
「……あなたはブラッドコードを失った特別な存在…切り替えだけでなく、新たなブラッドコードを取り込むこともできるはず。人の力を自分のものにする…これはあなたにしかできないこと。」
彼女は先程までの微笑みを真剣な表情に変え、私の瞳を見つめながら言葉を続けた。
彼女は赤い瞳をしていたことに気づく。
「あなたにしか、できないことがある…。」
彼女の赤い瞳はあまりにも多くの感情が入り混じっている。
彼女の言う"私にしかできないこと"とは何だろう。それは、私のブラッドコードが特殊なことや、自分自身のことを知らないことと関係があったりするのだろうか?多くの考えが頭の中を巡る。目が逸らせない。
「あなたの血でしか救えないことが…。」
私の血でしか救えないこと…?それは、どういう……?
私の問いが言葉となる前に、彼女の様子が変わる。と同時に強く白い光が溢れる。
光で彼女の姿が見えなくなる。あまりの眩しさに、目が眩んだ。強く引き戻されるような感覚が全身を襲う。
――――さあ…目を覚まして。
――――世界を…救って。
姿は見えないが、彼女の声が聞こえた。
言葉の意味は、うまく理解できないけど。彼女の瞳にあった感情と、関係があるのだろうか。
全身を襲う感覚に身を委ねる。目覚めが近づくのが分かる。
今しがたの不思議な少女との時間を思い返しながら、ゆっくりと目を開けた。