モモちゃんと彼女




オレには彼女がいる。

彼女は売れっ子で、業界でも名の知れている女優さんだ。世間的には、クールで、スタイリッシュで、どことなくミステリアスで…そんなイメージを持たれている。そう言えば、『女版ユキ』なんて言われてるのを聞いた事もあったっけ。(全然似てないけどね!)
だって彼女は本当は……

「モモちゃん、もうだめだ。今日もトークでうまく喋れなかった…。せっかくモモちゃんが振ってくれたのに…」

ほら、こんな風に、仕事終わりにオレの家に来て反省会をするくらいには繊細だし、ぐずぐずとべそをかきながら缶チューハイを飲んでいる姿なんて、とってもかわいい。

「そう?奈々美のイメージ通りに喋れたと思うよ?」

オレと彼女、片瀬奈々美は付き合って3年。出会ってからはもっと長いけど、その話はまたおいおいするとしよう。
そんなオレたちは業界で名の知れたもの同士だ。番組の共演だって何度もある。
まさに今日も収録を共にしてきたばかりだ。番宣のため共演者数名と一緒に、ネクリバにゲストで出演した彼女。前々から、もっとバラエティでも話せるようになりたい!と言っていたのを思い出し、収録中に話を振り、話も広がったのだが、本人的には納得のいく結果が得られなかったようだ。

「そうかなぁ?ちゃんとできてた?」
「できてたできてた!ばっちりだった!話も広がったし、ユキも褒めてたよ!」
「本当?」

うーん。でもなぁ…。と、また悩み始めた奈々美に向かって両手を広げ、おいで。と一声かければ、勢いよくオレの胸に飛び込んでくる。

「ちょっとずつでいいんだってば」
「うん」
「世間のイメージが、奈々美のキャラと違うからね。しんどいのはわかるけど」
「…うん」

そう言いながら頭を撫でると、ぎゅーっと抱きつく力が強くなった。
彼女の顔がある、オレの右肩が少し湿ったのを感じて、あぁ、またこんな事で泣いてる。かわいいなぁ。と心の中で呟く。
顔がにやけそうになるのを抑えながら、彼女の肩をそっと押して、くっついていた体を離す。そのままおでこを合わせて見つめ合えば、彼女の目にはやはり涙が溜まっていた。

「それにほら、こういう本当は泣き虫なところとか、甘えん坊なところはさ、モモちゃんがひとりじめしてたいんだよね」
「ふふっ。うん」
「だってモモちゃんは、奈々美の彼氏でしょう?」

うん、そうだね。と言いながら笑顔になった奈々美に、触れるだけのキスをすれば、彼女の頬は一瞬で染まる。


「キス一つで真っ赤になっちゃう、かわいい奈々美だって、オレだけが知ってれば十分じゃない?」

手で顔を隠しながら、何度も頷く彼女に、今度はにやけるのを抑えられなかった。



オレの彼女はとってもかわいいのだ。



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