二日後の昼、屋上前の踊り場にて




連絡先を交換してから2日後の昼休み。俺は屋上へ続く階段の1番上の踊り場で、片瀬さんを待っていた。

「まだかなぁー…」

15分前に送ったラビチャには、既読はついているものの、返事はまだない。
もしかして来られなくなってしまったのだろうか?それとも俺との約束は忘れて他の友達と約束してしまったのだろうか?
…教室戻ろうかな。そう思ってビニール袋を手に取り立ち上がると同時に、パタパタと階段を駆け上がってくる音が聞こえた。

手すりから身を乗り出して下を見れば、黒くて長い綺麗な髪を揺らしながら、待ち焦がれていた彼女がやってきた。
俺の視線に気が付いたのかぱっと上を向いた片瀬さん。彼女は俺と目が合った瞬間ににっこりと笑って、俺はドキッと胸が高鳴った。


「よかった、まだ居た」
「えっ、あっ…!」

戸惑っている俺を他所に、踊り場までやってきた片瀬さんは両手でパンと飲み物を抱えていて、俺は納得する。


「購買行ってたの?」
「うん、朝買う時間なくて…。ごめんね、購買思ったよりも混んでて…」


待たせちゃったよね。と、眉を下げる片瀬さんに、大丈夫だよ!と笑顔を向ければ、彼女はほっとした表情を浮かべながら、階段に腰を下ろした。


「ラビチャ、返せなくてごめんね。電池切れちゃったみたい」
「えっ?あぁ、そんなの全然いいよ!」


そう。来てくれたんだから、そんなの全然いいんだ。さっきまでちょっぴり落ち込んでたのは、秘密にしておこう。
彼女の隣に腰を下ろしビニール袋からパンを取り出して袋を開けると、あ!と片瀬さんが声を上げた。


「そのパン、美味しいよね!」
「えっ?あっ、うん!俺買い弁の時いつもこれ買っちゃう!」
「私も…!」


ぐっと詰め寄ってくる片瀬さんに思わずのけ反れば、片瀬さんは少し頬を赤く染めながら俺から離れていく。


「ごめん、共通点見つけて嬉しくなっちゃって」


照れたように笑う片瀬さんの言葉に、俺たちはまだ、クラスと名前しか知らない事に気が付いた。いや正確には、だけ、ではない。
成績トップで入学してきて、新入生代表として挨拶をした。木下と仲が良くて、それから…それくらい、か。
そんな事をぼーっと考えていたら、あのね、春原くん。と片瀬さんが声を上げた。


「今日、お昼誘ってもらえて嬉しかった!」
「えっ?!あ、よかった…!断られたらどうしようかと思った!」
「断らないよ」


私、春原くんともっと話してみたかったから。


そう言って優しく笑った片瀬さんに、本日二度目の胸の高鳴りを感じて、それを誤魔化すようにスポドリで喉を潤した。

それから俺たちは予鈴が鳴るまでお互いの事を話した。中学の事、好きな食べ物、好きな教科、好きな音楽、エトセトラ。まだまだ話し足りなかったけれど、また一緒にお昼を食べる約束をして、俺たちはそれぞれの教室に戻ったのだった。



back


novel top/site top