人知れずキス
奈々美が暫くうちで暮らす事になったその日の夜。俺が風呂から上がるや否や
「あ、万理なんか着るもの貸して」
買ってくるの忘れちゃった。と告げた奈々美。前に貸したスウェットをほら、と手渡せば彼女はそれを持って、シャワー借りまーす。と、浴室へと姿を消した。
あいつ、結構マイペースだよな。と、思いながら髪を乾かしたり、布団を敷いたりしていたら時間はあっという間に経っていて、シャワーから出てきた奈々美が、ありがとう。と言いながら寝室にやってきた。
その姿を見て、思わず動きを止めて奈々美を凝視する。
「…なに?」
「いや、別に…」
「ふーん…。ってか、万理身長何センチ?スウェットめっちゃ大きいんだけど」
180…。と答えながら、それだよ!と俺は頭を抱える。
そう、以前貸した時はこいつの事を何とも思っていなかったからさして気にしていなかったけれど、推定160cm前後の奈々美が180cmある俺のスウェットを着れば、そりゃでかいわけで…。
「目の毒…」
「は?何が?」
それよりドライヤー借りるね。と、再び寝室を後にした奈々美に、はぁ。とため息が出る。
思わず熱を持ちそうになる自身を落ち着かせるためにベッドへと寝転べば、疲れがどっと押し寄せ、俺はそのまま意識を手放した。
翌朝。目覚ましの音で目を覚まして、ベッドから降りようと足を下ろしたところで、ベッドの下に敷いた布団の存在を思い出す。
そういえば昨日気付いたら寝てしまっていたな。と心の中で謝りながら、奈々美の寝顔を見るべく枕元にしゃがみ込めば、彼女は小さく寝息を立てながら気持ちよさそうに寝ていて、思わず笑みが溢れた。
そんな奈々美を起こさないようにそっと抱き上げ、さっきまで自身が寝ていたベッドへと下ろせば、それと同時に彼女が、んー…。と唸りながら顔を横向けた。
晒された首筋に、昨晩の事を思い出す。
「昨日我慢したんだから、こんぐらい許せよ」
俺は1人そう呟いて、奈々美の唇にキスを落とした。
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