文化祭準備
秋、いろんな行事が行われるこの季節。
先日行われた体育祭でそれなりに活躍したオレは今、その脚力をフル活用して廊下を走っていた。
「春原!今日こそ逃さないんだから!」
「だから!部活最優先なんだってば!」
「まだ部活開始まで時間あるでしょ!!」
「1年は早く行って準備しなきゃいけないの!!」
何度言えばわかるんだよー!!ここ数日毎日のように木下に追いかけられているオレ。理由は簡単。文化祭のクラスの出し物の準備の手伝いが全くできていないからだ。
とは言っても、さっき言った通りサッカー部は部活最優先だし、クラスの出し物も縁日でそんなに準備は必要ないはずだ。それなのに…
「あんた本当はサボりたいだけでしょ?!」
「なんでそうなるの!」
文化祭委員の木下は部活よりもクラスの出し物を最優先としているため、オレの意見はどうやら耳に入っていないようだ。
っていうか、これから文化祭まで、毎日鬼ごっこしなきゃいけないの?!と心の中で叫びながら木下の方をチラリと振り返れば、彼女は前方を指差しながら、危ない!と声を上げた。
顔を正面に戻した時には既に遅く、オレは廊下の曲がり角で誰かにぶつかった。きゃっ!と小さくあがった悲鳴からして女子だと言うことがわかって、オレは慌ててその子の背中に腕を回す。
その瞬間広がった甘い香りにオレは、あっ。と声を漏らした。
「片瀬さん?!」
「えっ?あ、春原くん」
「ごめんね、大丈夫?!」
大丈夫だよ。と小さく笑った片瀬さんの顔が思ったより近くにあって、オレは慌てて離れる。それと同時に後頭部に乾いた音と共に衝撃が走った。
「いった!」
「やっと捕まえた!って言うか、走るならちゃんと前見て走りなさいよ!…って、奈々美!?」
木下はオレの前に立っている片瀬さんを見るや否や、大丈夫?!とオレと片瀬さんの間に割り込むように入って彼女に声をかける。
片瀬さんは再び、大丈夫だよ。と笑った。
「春原に変なことされてない!?」
「ふふっ、されてないよ」
変なことってなんだよ。と考えながら、にこにこと笑っている片瀬さんの手元に目を向けると、台本が握られている事に気が付いた。しかし、それは以前見せてもらったドラマの台本よりも簡易的なものだった。
「それなに?」
「これ?文化祭のクラスの出し物の台本だよ」
「あれ?奈々美、文化祭出られる事になったの?」
「うん。体育祭は出られなかったから、文化祭は1日だけでも出られるように調整してもらったの」
2人の会話を聞く限り、片瀬さんは元々仕事の関係で文化祭に出られない予定だったのだろう。っていうか、片瀬さんやっぱり体育祭居なかったのか。探したけど見当たらなかったから、そうなのかな?って思ってたけど…。
「片瀬さんとこ、劇やるんだ?」
「そうなの。私は1日しか出られないから道具係なんだけどね。春原くんと柚香ちゃんは?何やるの?」
「うちのクラスは縁日…って!そうだ!春原!話してる暇あるなら準備手伝いなさいよ!」
そう言って詰め寄ってくる木下に、ギクっ!と肩を跳ねさせながら、じゃあ!オレ急ぐから!と2人を置いて昇降口へと走れば、頑張ってね。と片瀬さんの声が聞こえて、今日の部活は頑張れそうだ。なんて自然と口角が上がったのだった。
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