幕間
最近バンちゃんが変だ。
そう思い始めたのは、多分1週間くらい前から。
まず、タバコを吸う回数が増えた。バンちゃんは俺が前にタバコの匂い嫌いって言ったからだと思うけど、吸った後絶対消臭スプレーの匂いがする。その匂いがよくするようになった。
それから、前よりも残業をいっぱいするようになった。夜中、コンビニ行くついでに事務所の前を通ったりすると電気ついてて、そういう時はバンちゃんの車がまだあるから、多分あれはバンちゃんなんだと思う。
そういえば、ななみんからラビチャの返事が来なくなったのも同じくらいからだったような気もする。2人とも忙しいのな。なんて思ってたタイミングで、バンちゃんがぶっ倒れた。
ななみんはバンちゃんの彼女だし、教えてやったほうがいいかもって思って連絡したら、久々に返事が来てちょっと安心した。
ただ、バンちゃんにとってはあんまり良くなかったのかも。
「環くん、昨日奈々美に連絡した?」
バンちゃんが倒れた翌日。
午後からリハーサル室に顔を出したかと思えば、少し気まずそうに俺にだけ聞こえるくらいの小さい声でそう言ったバンちゃんからは、また消臭スプレーの匂いがした。
「したけど、ダメだったん?」
「あ、いやダメではない、けど」
けど?って首を傾げれば、なんでもないよ。って笑顔が返ってきて、まぁなんでもないならいいか。って思ったけど、気になるからもう聞いちゃお。
「バンちゃん、ななみんと喧嘩してんの?」
「え?いや、喧嘩っていうか…」
俺がそう言えば、バンちゃんは瞬きを数回したあとに、でもまぁそうなるのかな。って小さく呟いた。その表情が今まで見た事ないくらいに寂しそうで、びっくりした。
「まじか」
「…だからライブには来ないかもしれない」
ごめんね。って謝るバンちゃんに俺は、でもさ。って話を続けた。
「ななみん、バンちゃんの事超気にしてると思う」
「え?」
「朝、バンちゃんに会ったらどんな様子か連絡くれーってラビチャ来てた」
なんで俺に言うんだろうって思ってたけど、喧嘩してんならしょうがないのかも。ってか、これってバンちゃんに言わない方がよかった?まぁ、いいか。
「そう、なんだ…」
「うん。なんで喧嘩してんのか知らないけどさ、ちゃんと仲直りしてな」
俺、またななみんと話したいし。
そう言えばバンちゃんは眉を下げながら、そうだね。って笑った。バンちゃんとななみんが仲直りしてくんないと、もう一生会えないかも知んないじゃんな。そんなん寂しいじゃんか。それに…
「バンちゃん、ななみんの事超好きだろ?」
「えっ」
「ななみんとデートしてた時、めちゃくちゃ楽しそうだったから。俺、あんな楽しそうなバンちゃん見たの初めてで、バンちゃんはななみんの事超好きなんだなってすぐわかった!」
だろ?って首を傾げれば、バンちゃんはまた眉を下げながら、そうだね。って笑った。
「ちゃんと言えば、ななみんもわかってくれるんじゃね」
「…俺が悪いの前提?」
「ななみんが悪いの?」
いや、俺だけど…。そう言うバンちゃんは目を泳がせながら、ぽりぽりと頬を掻いている。バンちゃんって、いつもはシュッとしてて、余裕があって、大人!って感じなのに、ななみんの話をするとなんとなくだけど、それがなくなってる気がする。気のせいかもだけど。
そんな事を考えてたら、ヤマさんから名前を呼ばれた。休憩が終わるみたいだ。
俺はバンちゃんに、ちゃんと謝ってな!と言い残して、みんなの輪へと戻ったのだった。
back
novel top/site top