お姫様になりたい@
「お姫様になりたい」
私の呟きに、ソファに腰をかけ私の隣で優雅に紅茶を飲んでいたナギくんが首を傾げた。表情はきょとんとしているにも関わらず、彼は品があってとても綺麗だ。
「急にどうしたんです?」
「みんなにちやほやされてみたい」
「Oh…ワタシの愛だけでは足りませんか?」
「そう言う事じゃ無いけど、やっぱり憧れるんだよね」
映画で見るお姫様は、いつもキラキラ輝いていて沢山の人に愛されている。女の子なら誰しもが一度は憧れる存在だと思う。
お姫様には王子様がつきものだけど、王子様はもう居るし。と、私は何か考え込んでいるナギくんをチラリと見上げた。
私の彼、六弥ナギはアイドルとして活躍する一方で、一国の王子様だったりする。容姿端麗で頭もいい。非の打ち所がない人だ。重度のここなオタクだけど。
そんな彼が、なぜ私のような平凡な生活を送ってきた人間と付き合っているのかは未だに不明だけれど、彼からの熱烈なアプローチを受けて絆されない女の子が居るのならば会ってみたいものだ。
「なるほど、ナナミはワタシに満足していないのですね…」
「そうじゃないってば!あっ!それより、ねぇ!私お姫様の素質あるかな?」
そう言ってソーサーとティーカップを手にして話を逸らした私に肩を竦めたものの、そうですね…。と顎に手を当てて頭のてっぺんから爪先までを舐めるように見るナギくん。その視線に自然と背筋を伸ばしている自分がなんだかおかしくて、にやけそうになるのを必死で堪える。
そんな私を他所に、ナギくんはソファから腰を上げて私の前にしゃがみ込んで私の脚にそっと触れた。
「えっ?!ナギくん?!」
「脚は角度をつけたほうが綺麗に見えます」
「は、はい…」
「それから、背筋を伸ばす時は背中が反りすぎないように…」
そう言ってナギくんは中腰になり、私を前から包み込むように私の背中を撫でる。それにびっくりして肩を跳ねさせれば、目の前にある形のいい唇が弧を描いた。あまりの顔の近さと綺麗さに、自身の頬に熱が集中していくのがわかって、私はそっと目を逸らす。
「あの、ナギくん、顔が近い、です」
「そうですか?」
そう言って更に顔を近付けてくるナギくんから逃げるように横にずれれば、ナギくんは私の隣に再び腰を下ろしながらくすくすと笑った。
ティーカップとソーサーをローテーブルに置いたと同時にナギくんが何か閃いたようで、ナナミ。と私の名前を呼んだ。
「なに?」
「そんなにプリンセスになりたいのですか?」
え!なりたい!!と詰め寄れば、ナギくんは自身の胸元に手を添えながら、ではレッスンしましょう!と満面の笑みを向けてくれた。
する!と返した私に綺麗な笑顔を向けたナギくんは、上品に見える所作なんかを教えてくれた。
そこまではよかったのだけれど、なんだかいつも以上にボディタッチが多い気がする。
元々ボディタッチは多い方だけれど、触り方がなんだかやらしい気がする。
挙げ句の果てには、挨拶のレッスンと称してナギくんは私にキスをし始めた。止めようとしたけれど、ノースメイアでは挨拶のキスは当たり前ですよ。なんて言われて、そのままナギくんのキスを受け入れるしかなかった。
最初は触れるだけだったキスが段々と深くなっていき、そのまま抱き抱えられて私は気が付いたらベッドの上にいた。
いや、待って!今の流れのどこでそんなスイッチが入ったの…?!
「んっ、ちょっと、ナギくん」
「なんですか?」
「ベッドの上で、何のレッスンする気なの…?」
ゆっくりと離れた唇に名残惜しさを感じながらそう問い掛けるも、ナギくんはただにっこりと笑うだけだった。これから何をするかなんて、本当は聞かなくてもわかるけど、ナギくんがなんの脈絡もなくこういう展開に持ち込むのは珍しくて、思わず聞いてしまった。野暮な事聞いたかな。と思った矢先にナギくんが口を開いた。
「決まってます。ベッドの上で愛し合うレッスンです」
「やっぱり…!だっ、大丈夫です。そう言うのは遠慮しておきます」
「プリンセスになりたいのでしょう?」
「いや、そうだけど…!」
それとは関係なくない?!と戸惑っている私を他所に、ナギくんは私の首筋にキスを落とした。頬をかすめた柔らかい彼の髪が擽ったくて顔を背ければ、ナギくんは待ってましたと言わんばかりに私の耳にキスを落とし始めた。
そして、ぐるっと反転した視界。先程まで私の上にいたナギくんがベッドに横たわっていて、私はその上に乗っかった状態だ。突然の事に処理が追いつかなくて咄嗟に上体をあげれば、お尻の辺りに硬いものが当たった。
お互いそういう事に対してそこまで積極的ではない私たちは、いつもそれなりの時間をかけて体を重ねる。だから、今ナギくんのモノが既に硬くなっている事に驚いて、私は思わずフリーズしてしまった。
そんな私を見兼ねたナギくんが、私の腰を掴み自身を擦り付けるようにゆっくりと動き始める。
突然の事に驚いて肩を跳ねさせれば、ナギくんは楽しそうに小さく笑った。
「驚いてますか?」
「う、ん…。ナギくん、今日どうしたの?」
「ワタシはいつもと何も変わりませんよ」
「えっ、だっていつもはそんなんじゃ…」
戸惑いを隠せないでいる私を見てナギくんは再び小さく笑ったあと、私の手をそっと掴みナギくんのモノへと重ねて、ワタシはいつも初めからこうなってますよ。と、ズボンの上から上下に擦り始めた。手を退けたくても、ナギくんの手によってそれは叶わない。
「私に…合わせてくれてたって事…?」
「ワタシのモノ、おそらく他の人のものより大きいです」
「…そうなの?」
「ナナミの負担になるのがイヤで、いつもワタシのモノ完全な状態ではなかったです」
それってつまり、ナギくんのモノはまだまだ大きくなるって事なんだろうか…?ナギくんが最初の相手な私は、他の人のソレを知らないけれど、本人も言うくらいだからかなり大きいんだと、思う。
いつも私の中に入ってくるソレを想像してあれ以上があるなんて、考えただけで血の気が引いた。そんな私を他所にナギくんは話を続ける。
「ですが、ナナミにはワタシの愛が足りていなかったようです」
「えっ!?なんの話?そんな事ないよ?」
「その証拠に、プリンセスになってみんなにちやほやされてみたいと言い出しました」
「それとこれとは関係ないから…!」
「ワタシがナナミを満足させてあげられなかったばかりに…」
「ナギくん聞いてる?!」
額に手を当てながら、はぁ。と悩ましげにため息を吐いたナギくんはそれだけで絵になって、不覚にも心臓が高鳴った。
「しかし、ナナミを満足させてあげたくても、ワタシのモノはセーブをかけ続けたが故に、完全な状態になりづらくなってしまいました」
「えっ…」
「なので、レッスンします。ナナミがワタシを喜ばせて、ワタシのモノ、完全な状態にした状態で愛し合う。それでこのレッスン終了です。オーケー?」
そんなのお姫様のレッスンじゃないし!オーケーじゃない!と言いたいところだけれど、私のためにナギくんは今まで我慢してくれていて、挙げ句の果てに…。と思ったら途端に罪悪感が芽生え、私は戸惑いながらも、オーケー。と返してしたのだった。
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