夢でまた会いましょう




久々の日曜日の休み。
同じく仕事が休みの奈々美と、一緒に朝ごはんを食べてその後2人でのんびりテレビを見たりだらだらと時間を過ごす。
お昼をちょっと過ぎた頃、たまたまつけていた番組で動物特集がやっていた。



『次は動物の赤ちゃん特集です!』



あー…こういうの好きそう。と、なんとなく隣に座っている奈々美に目を向ければ、案の定その目はきらきらと輝いていた。

画面に動物の赤ちゃんが映るたびに、かわいい〜!!と言いながら頬や口元に手を当てる奈々美に、いやおまえの方がかわいいよ。と心の中で呟きながらその様子を眺める。
その後気に入った動物がいたのか、奈々美はCM中にスマホで検索して画像を眺め、そのまま俺の肩にこてんと寄りかかった。そしてスマホの画面を俺の方に向けてきた。

「見て、めちゃくちゃかわいい」
「…なにそれ」
「テレビ見てなかったの?ミニブタの赤ちゃん」

ミニミニブタちゃんだね。なんてかわいい事を言いながら、再びスマホをいじり始めた奈々美はぽつりと、飼いたいなぁ。と呟いた。

「ブタ?」
「うん。犬とか猫よりミニブタがいい」
「あー…多分ここペット禁止なんだよなぁ」

あんまり気にした事なかったけど。と言えば、そっかぁ…。と肩を落とした奈々美は、スマホをいじるのをやめて俺の肩に寄りかかったままテレビに顔を向けた。


「万理はきなこに会えて羨ましい」
「きなこはかわいいよ。職場での俺の癒し」
「いいなぁ…」
「ちなみに、家での癒しは奈々美」
「…別に聞いてないし」

そう言って俺の肩にグリグリと頭を押し付ける奈々美の顔は、きっと赤くなってるんだと思う。はいはい。と頭をポンポンと叩けばその動きは止まった。

「そんなに飼いたいなら引っ越す?」
「んー…そこまでじゃない」
「そう?っていうか、奈々美動物見るのは好きだけど触るの苦手じゃなかった?」

そう、たしか奈々美は、小さい頃近所の犬に追いかけ回されたり、猫に引っ掻かれたり、カラスに頭を突かれてから動物に触るのが苦手だったはずだ。(ちなみにカラスに至っては未だに敵としてみなしている)
この前も一緒に道を歩いている時に正面から来た犬を見てかわいいかわいいと言っていたら飼い主さんに、よかったら撫でてあげてください。と声をかけられたが、結局びびって触れずに終わった。
そんな彼女がペットを飼いたいと言うとは思わなくて、ちょっと驚いた。でもまぁ、犬とか猫を選ばない辺り多分普通にまだ怖いんだろうけど。


「だって、万理が遅い時とか1人だと寂しいから…あっ…」
「え?」
「…なんでもない」
「寂しいの?」
「なんでもないってば」

嘘つかなーい。と頬を摘めば、もー!そうですー、寂しいですー。と唇を尖らせた奈々美。その言葉に自然と口元が緩む。

「やっぱ引っ越そうか」
「いいってば」

この家好きだし。と呟いた奈々美の腰に腕を回し、ぎゅっと抱き寄せて、口角を上げながら顔を覗けば、何よ。と言いながら眉をひそめる。その唇に触れるだけのキスをすれば、今そういう雰囲気じゃなかったじゃん!と顔を押された。

「かわいかったからつい」
「…わけわかんない」

そう言ってソファの上で膝を立てて、顔を伏せた奈々美。髪の隙間から覗いている耳は真っ赤で、本当見かけによらず初心だよな…と思わず小さく笑った。

「笑わないで!」
「ごめんごめん」
「…まだ笑ってる」
「奈々美がかわいいから」

笑いながらそう言えば、ばしっ!と膝の辺りを叩かれた。



奈々美は、かわいいと言われると尋常じゃなく照れる。
その事を知ったのは付き合い始めてからだ。ある日、友達と出かけるから服を見てほしい。と奈々美に言われたのがきっかけだった。その時いつもと違う系統の服を着ていた奈々美に、かわいい。と言った時、これでもかと言うくらい顔を真っ赤にしたのを今でも鮮明に覚えている。
それ以来、奈々美の事をかわいいと思った時には極力素直に伝えるようにしてるのだが、本人は未だに慣れないらしい。

「仕事終わったらすぐ帰るようにするよ」
「…付き合い悪いって思われても知らないから」
「そんなの、かわいい彼女が家で待ってるって言えば…いたっ!叩くなって」

ばしっ!と再び膝の辺りを叩かれた。その手を取って彼女の手の甲を親指の腹で撫でれば、くすぐったかったのか、奈々美は膝に埋めていた顔を俺の方に向けた。

「ははっ、顔真っ赤」
「万理のせいだから」
「ごめんね」
「別にいいけど」

そう言ってソファの上に寝転がり、座っている俺の太ももに頭を乗せた奈々美。
付き合ってから知ったことがもう一つあって、奈々美はめちゃくちゃ甘えたがりだ。見た目とのギャップが本当にすごいと思う。ギャップと言えば、そうだ、奈々美はあれが好きだった。と思い出した。


「ペット飼えない代わりに、あのでっかいろっぷちゃん買っていいよ」
「えっ?!」

ばっ!と勢いよく起き上がった奈々美の目は、先ほどと比べ物にならないほど輝いている。

「本当に?!」
「俺が帰って来るまでの間、ろっぷちゃんに相手してもらってな」
「…なんかその言い方、私が虚しい女みたいでやだ」

唇を尖らせながら、後ろに倒れ込み再び俺の太ももに頭を乗せた奈々美。その反動が若干痛かったけれど、そんな俺にお構いなしに鼻歌を歌いながらスマホを眺めている奈々美は恐らく、ろっぷちゃんグッズの通販サイトを見ているのだろう。
でっかいろっぷちゃんとは、奈々美がずっと欲しいと言っていたろっぷちゃんのぬいぐるみで、座った状態でも60cm前後あるらしい。
そのぬいぐるみを以前買ってもいいかと奈々美に聞かれた時に、邪魔になるからやめてくれ。と俺は一蹴した。
しかし奈々美は諦め切れないらしく、それ以降事あるごとに、そのぬいぐるみの事を話題にあげてくるのだ。つい先日も夕飯の席で、大きいぬいぐるみってかわいいよね。なんて唐突に話を振られたばかりだった。


「あ!よかった、在庫ある!」
「ネットで買うの?」
「え、だって1人で行っても持って帰ってこれないもん」
「次の休みにソライロモール行こうよ」

俺も買いたいもんあるし。と言えば、再び勢いよく起き上がった奈々美は、きらきらした目で俺に抱きついてきた。

「えー!本当に?それ最高!さすが大神様」
「なんだそれ」

くすくすと笑う俺のほっぺに、ありがとう!と言いながらキスをした奈々美。普段そんな事しないのに、どんだけテンションあがってるんだよ、なんてまた笑ってしまった。

「楽しみ〜」
「はいはい」
「今日は気分がいいので、夜ご飯は万理が好きな和食にします」
「それはいい事聞いた」

何がいいか考えておいてね。という奈々美の言葉に、さっき朝ごはんを食べたばかりなのに、早く夜にならないかななんて思ってしまった。

「夕方になったらスーパー行こ」
「なんなら今からソライロモール行く?」
「んー…今日はゆっくりしてたい、かも」

久々に1日一緒に居られるし。と言いながら、俺から離れて行こうとする奈々美の腰に腕を回す。
瞬きを数回したあと、目を細めて俺を見る奈々美には、俺の考えなんてお見通しなのかもしれない。



「お昼寝しない?」
「しない」
「なんもしないから」
「絶対嘘!」
「嘘つかないって。約束したろ?」

ね?とにっこり笑いながら首を傾げれば、本当になんもしないなら。と首を縦に振った奈々美。
いやごめん、なんもしないって言うのはもしも我慢できたらの話なんだけどね。と心の中で呟きながら、2人で寝室に向かう。
ちなみに、奈々美が使う予定だった一番奥の部屋が今は2人の寝室になっていて、いつもそこで一緒に寝ている。




2人揃ってベッドに寝転べば、ふぁぁ…と小さくあくびをした奈々美。そしてそのまま猫のように俺の胸元にすり寄って目を閉じた。

「え、奈々美寝るの?」
「お昼寝するんでしょー?」
「いや、そうなんだけど…」
「万理寝ないなら後で起こしてね」

久々に1日一緒に居られるしなんて、どの口が言ったんだ。と心の中で突っ込んでしまう程のスピードで、おやすみー。と完全に睡眠モードに入ってしまった奈々美に、まじか。と呟く。
ため息をつきながらも、まぁ、たまにはこんな日があってもいいか。と、窓から差し込む柔らかな日差しを感じながら、俺は目を閉じた。


夕飯は何を作ってもらおうかな。
そんな事を考えながら、もう聞こえてきた小さな寝息をBGMに、俺も夢の世界へと旅立った。




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