あくまであなたのためですから




「おかえり。奈々美さん、大丈夫だったのか?」


病院から帰ってきた環を寮の玄関で出迎えたのは三月だった。三月の問いかけに小さく頷いた環は、そのまま共有スペースへと足を向ける。
そこには、三月以外の5人が集っていて環は目を白黒させた。もう寝てる人も居ると思っていたからだ。おかえりと言う言葉に対し、ただいま。と返しながら環はソファへと腰をかけ、ふぅ…。と小さく息を吐いたあと話を始めた。


「ななみん、怪我とか病気ではなかった」
「よかった。環くん、すごく心配してたもんね」
「ん…。でさ、みんなに話しとかなきゃなんねーことがあって」

聞いてくれる?と首を傾げた環に、勿論!と笑顔で返してくれた5人に、環は奈々美が今置かれている状況を話した。
この事をIDOLiSH7のメンバーに話すのを、奈々美は反対していた。
しかし、彼らと一緒に仕事をする機会が多い今、微かな変化や不審人物に気付けるようにしておいた方が良いという声が上がり、渋々承諾したのだった。





「ストーカー…」
「あー…なんつーか、アイドルやってる俺たちも他人事じゃないよな」
「そうですね…。環くん、奈々美さんは犯人に心当たりは無いのかな?」
「ないっつってた」

そっか…。と重い空気が部屋に漂う中、今まで黙っていたナギが口を開いた。

「恐らく彼でしょう」
「彼?」
「タクミです」
「タクミって…たくみさん?!いや、無いだろ!」

いい人だったし!と言う三月を尻目に、ナギは話を続けた。その内容は以前環には伝えていたもので、タクミが奈々美の事が好きで、彼は彼女を追って来たという話だった。



「奈々美さんを追って…?」
「まぁ…でも確かに、同じ会社に居たならいろいろできる…のか?」

みんなが戸惑う中、ナギは環に向き合い真剣な表情で口を開いた。


「タマキ、あの時ワタシが言った言葉を覚えてますか?」
「あの時…?」
「もしもタマキとナナミの身に何か起きた時、疑うべきは1人」
「…その何かが、ストーカーって事?」
「ワタシはそう思ってます」

環とナギの話に他の5人は顔を見合わせる。それぞれの顔には戸惑いの色が見え、それぞれ思うところがあるのか押し黙った。
その沈黙を破ったのは大和だった。

「とにかく、俺たちは片瀬ちゃんを守ればいいんだな?」
「ななみんを守るのは!俺!」

環のその言葉に今度は6人が顔を見合わせ、そして一織以外の5人が口元を綻ばせた。

「…ごめん」
「謝る事じゃないぞ、環」
「そうだよ環!」
「でも、どうしても俺がななみんを守りたくて…」

そしてそれまで黙っていた一織が、大きくため息をついてソファから立ち上がり、環に向き合う。その目は鋭く、環は眉を下げた。

「私は正直、賛成しかねます」
「…いおりん」
「おい、一織」
「しかし、彼女は私たちのビジネスパートナーで、居なくてはならない存在ですし、その事を気にしすぎて四葉さんが仕事に身が入らない。なんて事があっては困ります」

なので、と続けた一織はその目を環から他の5人に向けて言葉を続けた。



「四葉さんが彼女を守れるように、手助けしましょう」



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