文化祭とそのあと




「6組の劇良かったね〜!」
「主役の子かわいかった」

片瀬さんのクラスの劇が終わった後、あちらこちらでそんな声が聞こえた。
結果として、劇は大成功。
主役を勤めた片瀬さんは、今日初めて演じたとは思えないほど上手くて、でも上手すぎて浮いてるなんて事はなくて、木下いわくうまく周りに合わせていたらしい。
とにかく、オレの心配なんて全く無意味だったのだ。

劇が終わってから片瀬さんに一言声をかけようと、木下と2人体育館の外で待つ。
ようやく出てきた彼女はクラスメイト達に囲まれていて、とてもじゃないけれど話しかけられるような雰囲気じゃなかった。

「行こっか」
「奈々美に声かけなくていいの?」
「あの状態じゃ無理だよ」

確かに。と呟いた木下と一緒にその集団横を通り過ぎて校舎へ向かう。校舎に入る瞬間に振り返れば、片瀬さんと目が合った気がした。







文化祭が終わり数日後、オレ達は変わらずいつもの場所で2人でお昼を食べている。
一緒に回れなくてごめんなさい。と頭を下げながらお気に入りのパンを差し出す片瀬さんに、全然大丈夫!と返せば、彼女は安堵の息を吐いた。

「文化祭、楽しめた?」
「楽しかった!委員会で売ってたお花も全部売れたし、劇がきっかけでクラスの子とも話せるようになったの」
「そうなの?!よかったじゃん!」
「うん、でもまだちょっと緊張しちゃうんだよね」

そう言って眉を下げた片瀬さん。やっぱり行事はクラスの仲を深めるんだな。なんて思っていたら片瀬さんが、それでね…。と深刻な面持ちで口を開いた。

「ん?」
「春原くんってお友達多いでしょ?だから、お友達と仲良くなる方法教えて欲しくて」
「仲良くなる方法?」

そう!と、お祈りをするように両手を胸の前で組んでそう言った片瀬さんの言葉に、オレは顎に手を当てて唸る。
確かに、オレは人より友達は多い方だと思う。でも、友達なんて自然にできてて、気が付いたら仲良くなるもんだから、改めてどうやって仲良くなるかと聞かれると悩んでしまう。
そんなオレをじっと見つめている片瀬さんに、オレは更に唸る。

「そうだな〜…。あっ」
「なんですか!先生!」

目を輝かせながら詰め寄ってきた片瀬さんの言葉に、先生って!と、思わず笑い声を上げる。それに釣られて笑った片瀬さんに、それだよ。と言えば彼女はきょとんとした表情で首を傾げた。

「素の片瀬さんを見せればいいんだよ」
「…素の」
「そう。本当はいっぱい笑うんだってところとか、そういうの沢山見せれば自然と仲良くなれるよ」
「…そうかな?」
「大丈夫!もしダメでも、片瀬さんにはモモちゃんが付いてるから!」

そう言ってウィンクをすれば、片瀬さんは驚いたように瞬きを繰り返した。あっ、なんか調子に乗りすぎたかな…。なんて思って慌てて、なんちゃって!と付け加えれば、片瀬さんはくすくすと小さく声を上げながら笑った。

「そうだね、春原くんがいるもんね」

その笑顔は今まで見たどの笑顔よりもかわいくて、うん。と言いながらもオレは思わず目を逸らし、ドキドキと大きな音を立てている心臓を必死に落ち着かせる。
素の片瀬さんを見せればいいんだよなんて言ったけれど、本当はその笑顔を独り占めしたいって思ってるって言ったら、彼女はどんな反応をするんだろう。



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