頼れる先輩?
「おまえは!なんですぐに言わなかったんだ!このどアホ!」
事務所に着いて早々オサムさんに、ちょっとこい。と会議室に呼ばれたかと思えば、怒号とともに頭を叩かれた。
昨日電話で報告した際に、明日詳しく聞くからな。と言われていた手前、それなりの覚悟をしてきたのだけれど、まさか怒鳴られるとは思わなかった。
叩かれた頭を軽く撫でながら、すみません。と頭を下げる。
「なんかあったらすぐ相談しろって言っただろ」
「いや、こんな大事になるとは思わなくて…」
すみません。と再び呟けば、大きなため息が聞こえた。そして頭の上にぽんっとオサムさんの手が乗り、そのまま優しく撫でられる。
「俺はな、おまえが心配なんだよ」
「…すみません」
「何回謝るんだ。ったく、手のかかる娘だ」
「え?」
オサムさんの言葉に首を傾げればオサムさんは、おまえが言ったんだろ?と鼻で笑った。
「オサムさんは私のお父さんだってな」
「…いえ、お兄ちゃんと言うよりはお父さんみたいだって言っただけで別に」
「照れんな照れんな〜!ま、冗談はさておき…おまえ、心当たりはないのか?」
「それが全く…」
「警察には?」
急に真剣な顔になったオサムさんの言葉に、まだです。返せばオサムさんは、そうか…。と、ため息を付いたあと、何かを思い出したように口を開いた。
「そう言えば、お前今小鳥遊さんとこでお世話になってんだって?」
「はい。家に帰るの、ちょっと怖くて…」
「ま、そりゃそうだろうな。んじゃ今日帰り送ってやるよ。小鳥遊社長にも挨拶したいし」
そう言って笑ったオサムさんに、私は今日の夜の予定を思い出して慌てて声を上げる。
「すみません、今日はちょっと予定が…」
「あ?そうなのか。どこ行くんだ?送ってくか?」
「Re:valeのお2人と食事に…前から約束してたので。迎えに来てくださるみたいなので大丈夫です」
ありがとうございます。と頭を下げれば、なら安心だな。とオサムさんは再び笑った。
それから、今後の仕事についてやその他諸々どうするのか話した後、私たちはそれぞれデスクへと戻った。
夜、予定通りの時間に颯爽と現れた1台の車。
運転席には岡崎さんがいて、助手席に座っていた百さんに、後ろ。と指をさされる。
会釈をしながら後部座席に乗り込めば、そこにはノートPCを弄っている千さんがいた。
「お疲れ様です」
「やあ、お疲れ」
「お仕事中でしたか?」
「ん?いや、大丈夫だよ」
そう言ってノートPCを閉じた千さんの隣に腰をかけ、ドアを閉めると同時に車が走り出す。
千さんとはドラマの撮影もあって割とコンスタントに会っていたけれど、百さんと会うのはかなり久々だな。なんて考えていたら、百さんも同じ事を考えていたのか、奈々美ちゃん久しぶりだね〜!!と声をかけてくれた。
「お久しぶりですね」
「変わりない?」
「はい、おかげさまで」
本当はいろいろあったばかりだけれど、彼らにまで知らせる必要はないだろう。とそう言えば、そっかそっか〜!といつもと変わらない明るい声で返してくれた百さん。
しかし、ひょこっと運転席との隙間からこちらを覗き込んだ彼は目を細めて、口をへの字に曲げていた。
「そう言うと思った!」
「え?」
「おかりん、行き先変更!」
百さんの言葉に岡崎さんは、了解です!と車線を変更した。行き先変更?と首を傾げている私に、千さんがくすっと笑ったのがわかった。
「噂を耳にしたから」
「噂…ですか?」
「そう。君が困ってるって話」
そう言われて思い当たるのは例の件しかなくて、そうですか…。と思わず目を逸らす。どこから話が漏れてしまったんだろう。顎に手を当てながら考え込めば、そんな私を見兼ねて千さんが再び口を開いた。
「たまたま楽屋に遊びに行ったら、IDOLiSH7のみんながなんだか真剣な面持ちで作戦会議をしててね」
「作戦会議…」
「彼らも必死に隠そうとしてたんだけどね」
「そうそう!だからあの子達を責めないで!」
「いえ、責めるなんてそんな…。ただ、お2人にもご迷惑おかけするわけには…」
ふっと薄く笑った千さんに反して百さんは、なんだと〜!と拗ねたような声をあげる。そして、再び運転席との隙間からこちらを覗き込んで、にこっと笑った。
「迷惑だなんて思ったりしないよ!それに、オレ達慣れっこだから、なんでも聞いて!」
「慣れっこ…」
「ま!冗談はさておき!とりあえず今日は予定変更!」
「特別に僕の城に招待してあげるよ」
その方がゆっくり話せるでしょう?と、口角を上げた千さんに、私は黙って頷いた。
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