【clap log】この言葉以外見つからない




『女性ならやっぱ、理想のプロポーズとかあるの?』


テレビから聞こえてきた話題に、思わずスマホから顔をあげた。
奈々美がゲスト出演している某芸人さん達のトーク番組。ドラマの番宣のため、主演の俳優さんと一緒だ。どうせ奈々美が理想のプロポーズを言ったあと、そのまま流れでゲストの2人に実演してもらおうか!なんて展開になるだろう。


奈々美の事を世界で一番愛している自分が、唯一彼女にしてあげられない"プロポーズ"という行為を、演技とは言え他の男がするのを見るのなんて、シラフじゃ耐えられない。



「オレ、明日オフだから飲んでよし!!」



誰に言うわけでもなくそう言ったオレは、冷蔵庫から缶チューハイを数本取り出し、早々に2缶を空にする。盛り上がっている芸人さん達の中、戸惑っている奈々美はとてもかわいい。


『それで?どう?もしなんかあるなら、実演してもらおうよ。ドラマでもカップル役なんでしょ?』


ほらきた。オレは缶を傾けながらテレビの画面を睨みつける。そんなオレも、えっと…。と言葉を選んでいる奈々美がカメラで抜かれた時には、その可愛さに口元が緩んでしまうのだから現金な奴だと思う。



『あんまり、結婚とか考えた事なくて具体的なのは思い浮かばないんですけど…』
『えー!そうなの?』
『はい。でも、やっぱり2人の思い出の場所とかでしてもらえたら、きっと幸せで泣いちゃうと思います』


そう言って薄く笑った奈々美の頬はほんのり赤く染まっていてオレは思わず、かわいいー!!と言いながらソファに倒れた。
そしてそのまま目を瞑って考える。


そうか、思い出の場所か。


沢山ありすぎるな。
でも、屋上に続く階段の踊り場は大人になった今はもう入れない。どこがいいかななんて考えていたら、うとうとしてしまっていたオレは、お風呂から上がってきた奈々美の声で起こされた。



「モモちゃん?」
「んー…ごめん、寝てた」
「全然いいよ」


お疲れ様。そう言いながら俺の頭を撫でるその左手を掴み、奈々美の指にゆっくりと自分の指を絡めた。突然どうしたの?なんてくすくす笑う奈々美のその薬指に、以前プレゼントした指輪がはめられている事に気付き思わず笑みがこぼれた。


「似合ってる」
「ありがとう」


モモちゃんがくれたからだよ。そう言いながら頬を染めて笑う奈々美へのプロポーズの言葉はありきたりだけど、ずっと隣で笑ってて。以外に思いつかないな。なんて、いつ来るかもわからないその時に、1人想いを馳せたのだった。



back


novel top/site top