【clap log】七夕




-外出てみて!


夜、1人で録画したサッカーの試合を見ていると、突然愛しの奈々美からそうラビチャが送られてきた。外?と思いながらベランダへと出て、ふと顔を上げれば大きな星の川が目に飛び込んでくる。
出たよ!とラビチャを送れば、それと同時にスマホが着信を知らせ、オレは慌ててそれに出た。


『天の川見える?』
「見えるよ。すごいね!この時期、雨が多いからちゃんと見るの久々かも」
『こっちもすごい綺麗でね、思わずラビチャしちゃった!』


興奮気味に話す奈々美は、今ドラマの撮影で地方にいる。のどかで空気がおいしい。なんて言っていたから、きっと星もさぞ綺麗に見えるのだろう。
そのまま電話を繋ぎながらしばらく星を見ていると、奈々美がぽつりと言葉をこぼした。


『1年に1回しか会えないなんて、寂しいね』


誰が?と聞こうとして、あぁ、織姫と彦星か。と1人納得した。そうだね。と返せば奈々美は、話を続けた。


『もし、私とモモちゃんがこの先死ぬまで、1年に1回しか会えません!ってなったらどうしよう』
「毎日電話するよ!普通の電話じゃなくて、テレビ電話!」
『ふふっ、現代に生まれてよかった!』


今日みんなで短冊書いたんだよ。とか、来年は一緒に見たいね。なんて、そんな話をしばらく続けていると、奈々美の声が段々とゆっくりになってきて、時折沈黙が混ざるようになった。



「眠い?もう切ろうか」
『…大丈夫。今日はまだ、お話してたい』

そこまで言った後、小さなあくびをした奈々美は、その後何を言っても頑なに電話を切ろうとしない。最近お互い忙しくて全然会えていないから、きっと名残惜しいんだろう。
それでも、明日も朝から撮影だろうし、何よりベランダで寝られたらたまったもんじゃない。


「寝るまで繋いでるから、ベッド行きな?」
『…はーい』


カラカラと窓を閉める音が聞こえた数秒後、布の擦れる音が聞こえた。どうやらちゃんとベッドへと入ったようで一安心だ。そんなことを考えていたら、
ねぇ、モモちゃん。と彼女が俺を呼んだ。


「ん?」
『…もし、1年に1回しか会えなくても…私の事、ちゃんと好きでいてくれる?』


不安げに聞かれたその問いに、勿論だよ!と答えれば、電話の向こうの彼女が安堵の息を吐いたのがわかった。


「例え10年に1回しか会えなくても、ずっと好きでいられる自信があるよ」


なんなら100年に1回でも大丈夫!なんて冗談を言えば、彼女は小さく声を上げて笑った。
ありがとう。の言葉の後、モモちゃん大好き。と呟いたななみんは、オレの返事を待つ事なく小さな寝息を立てた。もう聞こえないとわかってるけど、オレも大好きだよ。と告げずにはいられなかった。

電話を切って訪れた静寂の中、頭の中は奈々美の事でいっぱいになる。



この川を泳いで行けたら今すぐ奈々美に会えるんだろうか。



少し声を聞いただけで、そんな馬鹿な事を考えるくらい、会いたくて仕方がなくなるのに、100年に1回しか会えなくても大丈夫だなんて、よく言えたもんだ。
1人小さく笑みを溢し、愛しの彼女の寝顔を思い浮かべながら、オレは予定より早い眠りについた。



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