高校時代




※一人暮らしの万理の家にご飯を作りに行ってた時期の話




「万理、なんか最近楽しそうだね」


奈々美にそう言われたのは、千と音楽を始めて間もない頃。放課後の教室でだった。


「楽しそう?」
「うん。楽しそう」


そんなにわかりやすく表情に出ていただろうか。そう思って自分の顔をなんとなく触ると、奈々美がぷっ!と吹き出した。


「顔には出てないよ」
「じゃあなんでわかったの?」
「なんとなく。雰囲気が」


私以外にはわからないかもね。そう言いながら嬉しそうに笑った奈々美に、そう。とだけ返して、伝えなければいけない事があるのを思い出した。



「今日で最後でいいから」
「え?」
「相方が居座ってんだよ」
「相方…」


俺の言葉に、なんとなく奈々美が落ち込んだ気がして、ちゃんと説明した。音楽を始めた事、他校の1個下のやつと組んでる事。


「相方、男?」
「男だよ」
「かっこいい?」
「まぁ、顔はいいと思うよ」


自分から聞いておいて、ふーん。と興味なさそうに返す奈々美に、こいつだよ。と、携帯から写真を見せれば、へぇ。と俺の顔と見比べた。


「…私は、万理の方がかっこいいと思うけどなぁ。この子は綺麗系って感じ」
「え?あぁ、たしかにそうかも」


性格は綺麗なんて言葉とは程遠いけど。と、言えば奈々美はまた吹き出した。よく笑う。今日は機嫌がいいな。


「なんかいい事あった?」
「私?別に。万理が楽しそうだからかも。そう言えば今日は、相方家にいないの?」
「来るなって言っといた」
「そっか…いつか会わせてね」
「ん?あぁ、いつかね。案外気が合うかもよ」
「そうかな。そうだといいな」


そう言い終わると同時に、荷物をまとめ始めた奈々美に続いて、俺も鞄を肩にかける。


「駐輪場で待ってるから」
「わかった。日誌出したらすぐ行く」
「最後だし、和食が食べたい」
「別にいいけど、どうせまた魚焦がすよ?ハンバーグの方が成功率高いし、そっちの方がいいんじゃない?」
「いいよ。おまえが作ったもんなら、焦げた魚でもちゃんと食うよ」


あっそ。と言った奈々美の顔が赤く染まって見えたのは、きっと沈み始めた太陽のせいだろう。



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