かき氷




「これ、いる?」
「え?」

仕事から帰ってくるや否や、そう言って中くらいの箱を私に手渡した万理。なにこれ、と箱を回してそこに書かれている文字を読めば『かき氷機』と書かれていた。
なんでも、このかき氷機はかつてIDOLiSH7が番組を配信していた時に使ったものらしく、その後ずっと事務所で保管していたのだが、もう使わないだろうし持って帰っていいよ。と音晴さんに言われたらしい。

ちなみに2台あって、もう1台はIDOLiSH7の寮へと旅立ったのだとか。


「おまえが好きそうだから、もらってきた」
「かき氷?好きだけど」


違う違う。と言いながら箱の中から出てきたかき氷機を見て、私は思わず口元を押さえた。


「えっ!なにこれ、かわいい!」


箱から出てきたのはクマの形をしたかき氷機で、試しにクマの頭についているハンドルを回せば、目がきょろきょろと動いた。


「目めっちゃ動く!かわいい!」
「気に入っると思った」


くすくすと笑いながら、あとコレも。と鞄の中から何かを取り出した万理。
手渡されたそれはかき氷のシロップのようだけれど、見たことがない商品だった。私は首を傾げながら、パッケージに書いてある文字を声に出して読み上げた。


「王様プリン味…?」
「環くんが、かき氷するなら絶対これ食って!だって」


あと感想のラビチャもよろって言ってたよ。と言う万理の言葉に、へーこんなのあるんだ。と返しながら、私たちは早速かき氷を作ることにした。







「ん〜!!頭痛い〜!!」

こめかみを押さえながらそう言う私を見て、万理はくすくすと笑った。その手には、かき氷用のスプーンではなく缶ビールが握られている。


「本当に食べないの?」
「うーん、頭痛くなるの嫌だしなぁ…」
「それがいいんじゃん」


肩を竦ませながらスプーンで掬ったかき氷を口に運ぶ。
四葉環からもらった王様プリン味のかき氷シロップは結構好みの味で、私は早速ラビチャで感想を送ることにした。


「環くん?」
「そう。好みの味だったから。って、返信早っ」


あまりの返信の早さに思わず笑い声を漏らせば万理の、へー…。と言う声が聞こえた。不機嫌そうな声色に首を傾げる。


「何?」
「いや別に。それよりそれ、そんなに美味しいの?」
「うん。甘いけど、甘すぎないで…って、え、なに?ちょっ、んっ…!」


スマホの画面から目を離し万理の方を向くと同時に、私の首の後ろに万理の手が回りそのままぐっと引かれる。
そしてそのまま万理は私にキスをした。
冷え切った口の中が、万理の舌によって熱を帯びる。
何の脈絡もないキスに驚いていると、程なくしてその唇はチュッと音を立てて離れていった。


「うわっ、あっま…」
「…普通に食べればいいのに」
「普通に食べるより、こっちの方が美味しいだろ?」


ごちそうさま。と言いながらにこっと笑った万理のせいで、かき氷のおかげで下がったはずの体温がまた上がっていく。


「あっ、照れてる?」
「…うるさい」


かわいい。と笑った万理の口にかき氷を突っ込めば、少量だと言うのにこめかみを押さえた万理。その様子を見て、ざまあみろ。なんて心の中で笑えば、目を細めた万理の腕が、また私の首の後ろに回った。

2度目のキスは、万理の舌の方が冷たかった。



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