いたずらな指先に
「ねえ、奈々美」
「んー?なーに?」
オレの呼びかけに、ベッドの上にうつ伏せで寝転がりながらゲームをしている奈々美は、画面から目を離さずに返事をした。
「ゲームいつ終わるの?」
「んー!後ちょっと!」
「…30分前もそう言ってたけど」
「そうだっけ?あー!!やっぱり環くん強いなぁ!」
そう言って足をばたつかせた奈々美。どうやら今日は、陸と環との月1回のゲーム大会の日らしい。
明日は2人とも仕事が夕方からだから、オレはもっとイチャイチャしたいのに、奈々美はかれこれ1時間はゲームをやってる。
いや、ゲームをやるのは!全然いいんだけどさ!!
「わー!負けちゃった…」
そう呟きスマホでメッセージを打った後、ゲーム機を枕元に置き、ころん。と転がってオレの胸に収まった奈々美は、オレの顔を見るなり、くすくすと声をあげて笑った。
「モモちゃんすごい顔」
「ずっと待ってたんだもーん!」
そう言って、ぎゅー!っと思い切り奈々美を抱きしてると同時に、奈々美のスマホが震える。
仕事の電話かな?と思い奈々美を抱きしめていた腕を緩めれば、スマホを手にした奈々美が、あっ環くんだ。と呟いた。
え?環?と尋ねる前に、奈々美は通話ボタンを押してスマホを耳に当てる。
「もしもし?どうしたの?え?うん。今日はもう終わりにしとこうかな」
ごめんね。と謝ってるあたり、環からもう1回やろ!というゲームのお誘いだろう。でも環の性格からして、奈々美が1回断っただけで引き下がるとは思えない。
案の定、奈々美は困ったように笑いながら、また今度ね?と電話の向こうの環に言い聞かせている。
なんやかんや年下に甘い奈々美。強く言えないのか未だに電話をしていて、その間もオレのフラストレーションは溜まっていく。
…もう、環ならいいかな。
その考えが頭をよぎった瞬間、オレは奈々美の手からスマホを抜き取り、耳を当てる。
『ななみんお願い!あと1回だけ!』
「ちょっと環。オレの奈々美困らせないでよ!」
『え?あれ?ももりんじゃん。ちーっす。ももりん、今ななみんと一緒にいんの?てか、オレのって?』
「あはは!そのまんまの意味!わかんなかったら大和にでも聞いて!」
それじゃあね。と一方的に電話を切ったオレがスマホを返せば、そこには顔を青くした奈々美がいた。
「ちょっ!何で言っちゃうの…?!」
「大丈夫!明日会うからちゃんと口止めしておく!」
「そういう問題じゃっ!」
おろおろし始めた奈々美を抱き寄せれば、胸をドンドンと叩かれた。それから、モモちゃんのバカ〜!という罵声も聞こえてきて、今度はオレが笑う番だった。
「笑ってる場合じゃないから!」
「ごめん。早く奈々美とイチャイチャしたかったんだもん」
「モモちゃん…」
「奈々美がゲームしてる間、寂しかった〜」
「ごめんなさい…。でも、それとこれとは!」
「関係あるよ」
そう言って奈々美をベッドに組み敷けば、戸惑った表情がよく見える。
「ちょっ、モモちゃん…?」
「ごめんね。奈々美をオレから取った環と陸に、やきもち焼いちゃった」
「取ったなんてそんな」
「うん、遊んでただけだもんね」
でもごめんね、我慢できなかった。
奈々美の頬に手を添えて、キスをしようと唇を近付けた瞬間、また奈々美のスマホが震えた。あと数センチのところで邪魔をされて、オレはスマホを思わず睨みつける。
画面には『環くん』と表示されていた。
「ごめん、今切るね…!」
「ん?いいよ。オレ出るから」
「え?!ちょっとモモちゃん?!」
慌て始めた奈々美を尻目に、オレはスマホを手に取り通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『あれ、ももりんだ。なー、ヤマさんに聞いたけど、なんも教えてくんなかった』
「え?本当に?」
大和って口が硬いんだね!なんて笑いながら、奈々美に目をやれば、奈々美は不安げな表情でオレを見上げている。
なんだかその表情に酷く唆られて、オレは人差し指を口元の前で立てたあと、首を傾げた奈々美の服の中に、ゆっくりと手を差し込んだ。
突然の事で驚いた奈々美は、片方の手で慌てて口を押さえて必死に声を殺す。
その反応に口角を上げ、環の話をうんうん。と聞きながら、オレはその手を膨らみへと進め、そのまま片手でその膨らみを揉んだ。
奈々美の身体が小さく震え、甘い吐息が漏れた。
『なー、ももりん、ちゃんと聞いてる?』
「うん!聞いてる聞いてる」
『ならいいけど。で、ななみんは?俺、ななみんと話したいんだけど。ももりんは明日会えっから、明日話そ』
環の言葉に、わかった今代わるね!と返しながら奈々美を見れば、何かを察した奈々美は小さく左右に首を振る。
オレはそれを無視して、はい。とスピーカーモードにしたスマホを奈々美の顔の近くに置いた。
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