月が綺麗ですね
「見て!一織くん、向こうでイルミネーションやってるよ!」
すごいなぁ。そう呟きながらきらきらと目を輝かせる彼女に、人知れず片想いをして早数年。
もう、このままの関係でもいいのではないか、いっそのこと諦めようかと、何度も思った。
そんな関係に終止符を打つため、今日こそ想いを伝えよう。そう決心し、彼女を呼び出したが、肝心な言葉が出てこないまま、早くも1時間が経とうとしている。
「あの、奈々美さん」
「ん?」
「いえ、あの」
「ふふっ、今日の一織くんなんか変なの」
「え?」
そう言われ思わず、どこが変ですか?!と、食い気味に聞いてしまい、後悔した。いくらなんでも余裕がなさすぎではないだろうかと、少し恥ずかしくなり、やってしまったと、思いに更ける。
そんな私を見て彼女は、ほら!と声を上げた。
「さっきからよく、ぼーっとしてる!」
「えっ…あ…すみません」
「謝らなくてもいいのに。どうしたの?悩み事?」
話なら聞くよ?そう言ってくれる彼女の奥に、イルミネーションとは違う輝きを見つけた。
そして言うなら今しかないと、私は彼女をまっすぐと見ながら固唾を飲み込んだ。
「奈々美さん」
「なあに?」
「月が綺麗ですね」
えっ?そう言いながらキョロキョロと空に浮かぶ月を探す彼女に、後ろですよ。と彼女の後ろを指させば、わぁ!と感嘆の声をあげる。
「満月だぁ!すごいね、一織くん…!」
そう振り返った彼女の笑顔の前では、輝く満月も霞んで見えた。それと同時に肩の力がふっと抜け
想いは伝わらずとも、この笑顔が見えただけでも良しとしようと彼女の横に並んだ時、彼女が小さく呟いた。
「このまま時が止まればいいのにね」
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