月が綺麗ですね




「大和さん〜!しっかり歩いてください!」
「ん〜」

ドラマの打ち上げ後、完全に酔っ払ってしまった大和さんを任せられてしまった私。
タクシーに乗ろうと促したが、歩く!と言って聞かない彼を、支えながら歩くこと数十分。男性の体重を支えるのがしんどいのは勿論のこと、私はいろいろ限界を感じ始めていた。


何を隠そう私は彼、二階堂大和の事が好きなのだ。


そんな彼に密着されてドキドキしないはずがなく、一刻も早く彼を送り届けて自由の身になりたかった。
しかし、私の気も知らずに大和さんは、奈々美は細いなぁ。と言いながら腰に手を回したり、道を案内する時に耳元で囁いたり、私をからかって楽しんでいた。

はぁ、とため息をつきながらふと空を見上げると、そこには大きな月が輝いていた。


「ねぇ、ほら大和さん見てください!月が綺麗ですよ」

 
その言葉に一瞬大和さんの歩みが止まったが、すぐにまたふらふらと足を進め始めた。

「月ぃ?お兄さん、今酔ってるから二重に見えるなぁ」
「いや、それ街灯ですし」

え〜?と言いながらケラケラ笑っている大和さんに、再びため息が出てしまう。
せっかくこの感動を共有したかったのに、残念だなと思いながら、その後も酔っ払いの大和さんを支えてやっとの思いで彼の住む寮についた。

「ほら、大和さん着きましたよ」
「お〜ちゃんと帰ってこれた。偉い偉い」

そう言いながらなぜか私の頭を撫で始める大和さん。もう、やめてくださいよとその手を振り払おうとした瞬間、私は腕を掴まれて、気付いたら大和さんに抱きしめられていた。
触れている体からは自分と同じくらい、もしくはそれ以上に早い、彼の鼓動が伝わってきた。

「ちょっと大和さん…!」

離してください!と言う私の声など耳に入っていないのだろう、大和さんは小さく、確かに月が綺麗だな。とだけ呟く。それから大きく息を吸い、私の肩口に顔を埋めながら、こう囁いた。


「お兄さん、おまえとなら死んでもいいわ」



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