月が綺麗ですね




「今日のライブも最高だったな!」
「はい!いつもお誘いありがとうございます…!」
「こっちこそ、いつも付き合ってくれてありがとな」

今日はいつも仕事でお世話になってる奈々美ちゃんと、海外アーティストの来日記念ライブに来ていた。
今はその帰りで、セトリが神だったとか、あそこの演出がかっこよかったとか、感想を語りながら、駅までの道を歩いている。しかし、楽しい時間はあっという間で、駅が目と鼻の先に見えてきた。

「あ、もう駅だ」
「早いですね。話し足りないです…!」
「本当だよな!」
「あの…、三月さんさえ良ければ、途中まで歩いて帰りませんか?」

疲れたら近くの駅から電車乗る感じで。まさかの提案に俺は二つ返事で返す。すると、よかった。と笑う彼女の笑顔に、なぜかドキッと胸が鳴った。
どうせなら、海沿いの公園を歩こうか。と、移動したがカップルだらけでちょっと気まずい。

「なんか場違い感すごいな」
「確かに…でも、通り過ぎるだけですし!」

大丈夫ですよ!と言う彼女に、それもそうか。と先程のようにライブの感想を語りあった。
途中話すぎて喉が渇いたオレ達は、自販機で温かい飲み物を買って、近くのベンチで足を休める。


「今日あんまり寒くないから、いくらでも歩けちゃいますね!」
「だな!って、話に夢中で気付かなかったけど、今日は月が綺麗だな」
「……本当ですね。死んでもいいくらい」

そう呟いた彼女に、死なれたら困るわ!と笑えば、彼女も、そうですよね!と笑った。その表情はなぜか少し寂しそうで、でも月明かりに照らされてとても綺麗だった。

その後、もう時間も遅いしと、近くの駅から電車に乗って解散した。



翌日、寮で環と壮五が話してる内容を聞いて、俺は自分の言葉と彼女の言葉を思い出し、1人顔を赤らめた。それはもう、みんなに熱では?と心配されるほどに。


「なあ、そーちゃん。月が綺麗ですね。って言われたら、なんで返すの?」
「夏目漱石の逸話の?どんな言葉でも素敵だけれど、定番の返しとしては、死んでもいいわ。かな」


あぁ、次彼女に会う時、どんな顔をして会えばいいんだろう。



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