大好きな君とA




「着いたー!!」
「わー!!モモちゃん、運転ありがとう」

長い渋滞をなんとか乗り越えて、やってきたのは関東郊外の温泉旅館。海沿いにあるオーシャンビューの露天風呂付きの部屋は、人気でなかなか予約ができないらしい。(ちなみに今回はいろんな人脈を使って取ってもらっちゃった!)
迎えてくれた旅館の人に車の鍵を預けて、オレたちは早々に部屋へと向かった。


「すごい…!」

和洋室の広い部屋の中を奈々美は歩き回る。時折、わー!と感嘆の声をあげているその姿に、つい頬が緩む。
露天風呂を観に行った奈々美の後を追って、これまた広いデッキへと出れば、海風が彼女の髪を撫でていた。

「喜んでくれた?」
「うん…!って、ごめんね。モモちゃんの誕生日なのに、私がはしゃいでて…」
「いいんだよ!奈々美の笑顔が最高のプレゼントだもん!」

そう言って頬に軽くキスをすれば、奈々美は勢いよく抱きついてきた。

「年末はまた忙しくなるし、今日はゆっくりしよ!」
「うん。ありがとう」
「どういたしまして!さて、これからどうしようか?どっか出かける?」
「ん〜…ちょっとだけゆっくりしたいなぁ…最近モモちゃん不足だったから」

上目遣いでオレを見ている奈々美の頬に再びキスを落とせば、そこじゃないんですけど。と彼女は唇を尖らせた。かわいいなぁと眺めていたら、唇に柔らかい感覚。
それがなんだかすごく愛おしくて、オレは背伸びをしている片瀬を抱き上げて、その場でくるくると回る。

「なになに?!目回っちゃうよ!」
「大丈夫だよ!」

止まって〜!と楽しそうな笑い声まじりのお願い通りに、足を止めるも、奈々美は未だに笑っている。
しばらくして落ち着いた奈々美が、ゆっくりとオレから離れた。

「はー…びっくりした!」
「普段できないことやってみたくなっちゃって!楽しかったでしょ?」
「うん」

にこにこしている奈々美の頬と鼻の頭が少し赤くなっているのがわかって、両頬を包み鼻の頭にキスをする。

「寒い?」
「ほんの少し。笑ったからちょっと暖かくなったけど」
「部屋戻ろっか」

風邪ひいたら大変だし。と、奈々美の手を引いて部屋に戻り、オレたちは夜まで部屋でゆっくり過ごした。

夜は部屋で食事をとった後、バレないように軽く変装をして、ライトアップされた海沿いの道や近くの神社を回った。


そしてひとしきり楽しんだオレたちは今、2人で露天風呂に浸かっている。

「きもちいねぇ…」
「そうだね」

はぁ〜。と二人で息を吐いて、顔を見合わせて笑い合えば、オレの肩に奈々美が寄り掛かった。
あぁ、幸せだなぁ。なんて思いながら、奈々美の腰に腕を回してそっと撫でれば、同時に、あ!と声が上がった。

「そういうことは、お風呂出てからって言った」
「え?あー…そうだっけ」
「そうだよ!」

そういえば、お風呂に入る前にそんなことを言ってたっけ…。しかし、タオルを巻いているとは言え、大好きな奈々美が裸で隣にいるのに我慢なんてできるわけがない。
そっと太ももに手を伸ばせば、こら。とオレの手を叩く奈々美。

「どうしてもダメ?」
「どうしてもダメ」
「ちょっと触るだけだから」
「やだ」

頑なに拒む奈々美に、オレは最終手段を使うことにした。

「あーあー。モモちゃん、今日誕生日なのにな〜」
「うっ…!」
「大好きな彼女に触ることもできないなんて、かわいそすぎない?」

大好きなを強調してそう言えば、奈々美は自身の両手で頬を包みながら小さく唸り始める。
よし、もう一押しでいけそうだ。

「オレは、奈々美ともっといろんな思い出作りたいんだけどなぁ」

いや、今日これまでも沢山思い出は作ったし、これに関しては今のままでも十分なんだけど、奈々美が『思い出』というワードに弱いというのを利用させてもらった。ごめんね奈々美。
さて、どうだ?と未だに唸っている奈々美に目を向ければ、ぱちっと目が合う。

「さ、触るだけだからね」

恥ずかしそうにそう言った奈々美に、オレは大きく頷いて、彼女の体を隠していたタオルをそっと剥ぎ取った。



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