破天荒ガール




※公式家族構成丸無視の兄妹設定です



最後に会ってから2週間。
毎日ラビチャを送りたい気持ちを抑えて迎えた今日こそ、思いを伝えるにはベストのタイミングだ。
独自のルートから手に入れた、お兄ちゃんの今日のスケジュールを頼りにお店へ行けば、そこには御目当ての人が居て、口元が緩んでしまう。

「万理さん!お久しぶりです!好きです!」

大好きなその人の顔を覗き込むように言えば、万理さんは驚いた表情を浮かべた。

「あれ?奈々美ちゃん?久しぶり」

なんでここに?と首を傾げている万理さん。2週間ぶりに直視したそのご尊顔に倒れそうになるのをぐっと耐える。
と言うか、私の告白はスルー?そんなところも好きですけど。

「独自のルートから、今日のお兄ちゃんのスケジュールを入手しました!」
「あぁ、百くんか」
「え?なんでわかったんですか?あっ…!もしかして相思相愛だから…?!なら話は早いですね!今日こそ、結婚を前提に付き合ってください!」
「あはは、相変わらずだね。千ならもうすぐ来ると思うよ」

私の話聞いてました?!と万理さんの隣に座り、腕にぎゅっと抱きつくも、万理さんはニコッと笑うだけで、何も言ってくれない。


私、折笠奈々美は今や国民的アイドルであるRe:valeの千の妹だ。
ある日お兄ちゃんから紹介された彼、大神万理さんに長い長い片思い中。
万理さんが失踪してる間、他の男の人と遊んだこともあったけど、やっぱり私には万理さんしかいないみたいで、再会できた時は運命だと思った。
また失踪されたら困るし、こうなったらもう家族になるしかないのでは?!と、会う度に告白をしてるのに、万理さんは全く振り向いてくれない。簡単に絆されないところも勿論好きだけれど!
でも、そろそろ振り向いて!と心の中で嘆いていると、後ろから呆れたような声が聞こえた。

「なんで居るのさ」
「お兄ちゃん今いいところだから邪魔しないで」
「邪魔なのは奈々美の方だよ。久々に万と2人で飲めるって楽しみにしてたのに」
「万理さんが居るところに私が居るのは自然の摂理」

私がそう言うとほぼ同時に頭上からくすくすと笑い声が聞こえてきて、勢いよく見上げれば、砕けた笑顔を浮かべている万理さんがそこには居た。
何その笑顔最高。かわいい。結婚してください。

「全部口に出てるよ」
「お兄ちゃんには言ってない」
「万はいつまで笑ってるのさ」
「ははっ、ごめんごめん。はー…久々にこんなに笑った」
「なっ…!万理さん!私、真剣ですよ!」

きりっ!と真剣な表情でそう言えば、万理さんは優しく笑いながら私の頭をぽんぽん。と叩いた。

「わかってるよ」

きゅんっ…!!
万理さんに聞こえてしまうんじゃないかってくらいときめいて、心臓が痛い。あーもう本当にかっこいい大好き大好き!!

「どうしたら付き合ってくれますか?」
「ん?んー…そうだなぁ…」

万理さんはしばらく考えたあと、ほんの少しだけ口角をあげて、ぐっと顔を近付けてきた。
ちょっとでも首を前に出せば唇が当たってしまうんじゃないかという距離に、ぼっ!と顔が熱くなるのを感じて、思わず俯く。

「ば、ばば万理さん、近いです…」
「わざとだよ」
「えぇ…なんですかそれ…!」
「奈々美ちゃんが、この距離に慣れたら付き合おうか」
「へ?!」
「だってこの距離に慣れてくれないと、キスもできないでしょう?」
「キっ…?!ななな、何言ってるんですかぁ!!」

頬を抑えながら視線だけを万理さんに向ければ彼は、どう?とあざとく首を傾げた。
どうもなにも…!

「慣れるなんて!むっ、無理に決まってるじゃないですか!!」

万理さんのバカー!
負け犬よろしくそんな捨て台詞を吐いて、私はその場から逃げるように姿を消したのだった。








「はー、おもしろかった」
「ひどいお兄ちゃんだな」
「それを言うなら万はひどい男だ」

満更でもないくせに。と肩を竦める千に、まぁね。と返しながらメニューを眺める。

「だってかわいいじゃん」
「僕に似て?」
「え?なんて?聞こえなかった」

店員さんを呼んで千も食べられそうなものを適当に注文し、ファーストオーダーのドリンクが到着した頃、千が再び口を開いた。

「で?どんなところがかわいいの?顔?」
「顔もだけど、おまえの妹とは思えないほど素直なところも」
「僕だって素直でしょ」
「ある意味素直」

千の妹、奈々美ちゃんはかわいいし、綺麗だと思う。
好みかと言われればまぁ好みだし、ありっちゃありだ。それ故に千の言う通り、俺も満更でもない。
自分からはぐいぐい来るくせに、さっきみたいにほんの少しこちらからいけば顔を真っ赤にするのとか、あーかわいいな。って思う。
ただひとつ、懸念点がある。

「もしかして万、年齢気にしてる?」
「まぁ、7個も下だとさすがに」
「20歳からみたら27歳はおじさんだもんね」
「おい。誰がおじさんだ」

そう。奈々美ちゃんは今年成人したばかりの7個下。出会った頃なんて小学生、5年前は高校生になったばかりだった。
そんな彼女に再会したのはわりと最近。
すっかり綺麗になった奈々美ちゃんを見て、やっぱり千と同じ血が流れてるんだなぁ。なんて関心をしていたら、いきなり『結婚を前提にお付き合いしてください!』なんて迫られるようになって、このぶっ飛んでる思考も、千と同じ血を感じずにはいられなかった。

「若い頃って、年上に妙な憧れがあるだろ?奈々美ちゃんのも、それだと思うんだよ。実際付き合ったりしたら、なんか違った。なんて思われそうだし」

届いた料理に箸を伸ばしながらそう言えば、千は興味なさそうに、ふーん。と呟いたあと、腕を組んで首を傾げた。

「でも、手放す気は無いって、やっぱり万はひどい男だね」
「違うって。なんか違ったって思われないように、ちゃんと俺を知ってもらわないと」
「そうね。まぁ、飽きるまで付き合ってやってよ」

飽きないと思うけど。そう言って笑った千は、面倒見のいい兄のような顔をしているけれど、俺にはわかる。

こいつ、ただ楽しんでるだけだな。



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