ドッキリ放送中




本日のターゲットは女優 片瀬奈々美。
番組に寄せられた『ドッキリを仕掛けられている様子を見てみたい芸能人は?』という視聴者アンケートの中でも、常に上位に君臨していた彼女。

-クールな奈々美ちゃんの、意外な一面を見てみたい!

-爆笑してるところとか見たことないから

-素の奈々美ちゃんが気になる!


など多数の声も同時に寄せられている。
そこで我々は満を辞して彼女にドッキリを仕掛け、女優 片瀬奈々美の本性を暴くことにした!
次々と起こる不可解な現象に、どのような反応を見せてくれるのか!?



スタジオゲストのIDOLiSH7二階堂大和さん、和泉三月さん、六弥ナギさん。

「お?」
「はい!」
「イエス」

ターゲットと親交が深いと聞いてますので、リアクション、しっかりお願いしますね。

「頑張りまーす」
「任せてください!」
「OKです!」



本日の仕掛け人は番組スタッフ2名(偽)と、今回片瀬とドラマで共演しているRe:valeの千。
と言っても、千はどのようなドッキリが仕掛けられるかまでは知らないため、彼のリアクションも一緒に楽しんでもらおう。

「そっちの方が楽しみだわ」



–都内某スタジオ内会議室


「おはよう」
「おはようございます。よろしくお願いします」


コンコンというノックの後、Re:vale 千の後ろから姿を現したターゲット。
今日は番宣の収録と聞かされているはずだが、この番組はもちろん偽番組だ。
スタッフに挨拶をしている彼女の手には、何やら紙袋が握られている。

「あの、よろしければこれ皆さんでどうぞ」
「え!わざわざありがとうございます!」

片瀬に差し出され、スタッフが受け取ったのは某洋菓子店の詰め合わせ。どうやらスタッフへの差し入れのようだ。

「あっ!これ!俺の実家の洋菓子店です!奈々美さ〜ん!いつもありがとうございます!」


その後、普段の収録前の打ち合わせとなんら変わらない光景が続く。

「では、こちらで簡単な打ち合わせの方と、えー…あとは収録前にインタビューですねお願いします」
「インタビュー?」
「あれ、伝わってませんでした?」
「はい。すみません」
「大丈夫です。えっと、うちのあのー…web媒体の方に載せる用のですね、インタビューをお願いしたいと思ってまして、写真の方も何枚かお願いできればと」
「あぁ、なるほど。わかりました。インタビューは問題ないです。写真は打ち合わせ後にマネージャーに確認しますね」

当初の予定になかったインタビュー。
このインタビュー中にいろんな仕掛けが彼女を襲う!
しかし、そんな事は梅雨知らず、偽番宣の打ち合わせを真剣に聞いている片瀬。
打ち合わせ自体は10分ほどで終了。

「では、インタビューに入らせていただきます」
「はい」
「よろしくお願いします。あ、すみません。その前に一口だけお茶いただきます」

ここで、あらかじめ机の上に用意されていたペットボトルのお茶で喉を潤した片瀬。
しかし、そのお茶こそが今回の仕掛けの1つ!


仕掛け1:出されたお茶がセンブリ茶


「うっわ!出た!」
「大和さんとナギは飲んだことあるよな」
「ジーザス!あの味、思い出したくもないです!」

罰ゲームでお馴染みのこのセンブリ茶。
我々は事前に、片瀬のマネージャーから『今まで番組でセンブリ茶を飲んだことは無いです』という情報を得ている。

果たして、人生初のセンブリ茶に、片瀬はどのようなリアクションを取るのか!


「すみません。よろしくお願いします」


まさかの無反応


「まじか!」
「Oh!」

スタッフに向き直った片瀬はいつもと変わらない表情で、特に我慢している様子もない…。

「いえいえ。お茶はお好きな時に飲んでいただいて構いませんので」

スタッフのその言葉に、ありがとうございます。と返した片瀬は、その後もインタビューの合間に少しずつお茶を飲んでいくも、無反応。
予期せぬ事態に、我々は予定より早いが2つ目の仕掛けを導入する事にした!その仕掛けとは…!


仕掛け2:天井から虫のおもちゃが落ちてくる


「めちゃくちゃベタなの来た!」
「流石にびっくりするのでは?」

インタビューを受けている片瀬の目の前の机目掛け、天井から虫を投下!!


3…2…1…ポトっ

「ん?」
「どうしたの?」
「あ、なんか虫が…」

落ちてきた事にも大して驚かず、千の問いかけにそう返しながらも、一向に動かない虫を自身のボールペンで突き始めた片瀬。

「動かない、死んでますね」

そして片瀬は合掌した後、ちょっとすみません。とスタッフに断りを入れ、その虫を資料に乗せて移動させ、ゴミ箱の中へ…。

「強い…」

「すみません。お待たせしました」
「いえいえ。びっくりしましたね?」
「本当ですね。どっから来たんですかね」

「いやいや!全然びっくりしてないじゃないですか!」

本当ですね。と言いつつ、全く驚いた様子のない片瀬に、スタッフは思わず目を合わせる。
その後も淡々とインタビューを続けていく片瀬に、我々はめげずに更なるドッキリを仕掛ける!それは…


仕掛け3:心霊現象


数多くの芸能人をビビらせてきたこのドッキリ。流石にここまで無反応だった片瀬も何かしらの反応を示すはず!
まずは、部屋を真っ暗にして様子を伺うとしよう。

部屋真っ暗まで3…2…1…

「あれ?」
「おや?」

「千さんも全然驚かないなー」

流石片瀬、部屋が暗くなっただけでは驚かず、辺りをキョロキョロと見回しているだけだ。

「おふたりとも大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ」
「はい、大丈夫です。停電ですかね?」
「そうみたいですね。ちょっと私達様子見てきますね」

そう言い残し会議室を後にしたスタッフ2人に、お願いします。と声をかけた後、片瀬は千の腕を軽く叩きながら、千さん千さん。と彼を呼んだ。

「なに?」
「おばけ出てきたらどうしましょう」
「奈々美ちゃんって、暗いところに来るとすぐにおばけに会いたがるよね」

千には気を許してるのか、いつもより明るめの声色で千に話しかける片瀬。それよりも我々が気になったのは、お化けに会いたがっている。という点だった。

「だって、一回くらい見てみたくないですか?」
「やだよ。怖いもん」
「千さん、全然怖いと思ってないですよね」

くすくすと笑い始めた片瀬は、あろう事か立ち上がり真っ暗な部屋の中を鼻歌まじりに歩き始めた。

「いや、逆にこわいわ」
「Oh!ナナミは強いですね!」

予想外の行動に、このあと出てくるはずのおばけに扮した子役ががなかなかポジションに付けないでいる。そこで、機転を聞かせた子役が、片瀬の背中をトントン。と叩いた。

「はっ!!」

それに反応して振り返った片瀬は、なぜか嬉しそうな声色で、千さん!今、誰かに叩かれました!と千の元に駆けて行った。
が、真っ暗な中走ったが故に、壁に立てかけていたパイプ椅子に激突して盛大にコケる片瀬。

「え、これも仕掛け?」

ガッシャーン!という音の後に、笑い始めた片瀬。
もはやこっちの方がホラーである。

「転んだの?大丈夫?」
「あはは、コケました。はー、面白い。喉渇いたのでお茶飲みます」

一体何が面白いというのだろうか…。
あまりにも予想の出来ない片瀬の行動に、この仕掛けは無意味だと判断したスタッフは、急遽予定を変更することに。

パッ!

「あっ、明かり着いた」
「わー…目が…!!」

そう言って両目を腕で覆った片瀬の手には、半分ほど減ったセンブリ茶が握られている。

「普通に飲んでんのかよ!」
「ほんっとになんも感じないんだな」

そこにそそくさと戻ってきたスタッフ達。

「すみません。なんか電気設備に不調があったみたいで」
「そうなんですね。全然大丈夫です」
「何ともなかったですか?なんか…あの、椅子が散乱してますが…」
「あっ、すみません…。調子に乗って歩いてたらぶつかって転びました」

直します、すみません。と、自身の失態を包み隠さず告白した片瀬が、椅子を直しながら口を開いた。

「さっき、部屋が真っ暗になった時に、誰かに背中叩かれたんですよね」
「え?…あぁ、もしかして…」
「おい、やめろよ…」
「もしかしておばけですか?」
「はい。…実はこのスタジオ、そういう噂があるんですよね」
「そうなんですか?!ちょっとあとで詳しく聞かせてください」

心なしか目を輝かせながらそう言った片瀬に、スタッフは黙って頷くことしかできなかった。



その後も細々とした仕掛けを発動させていくも、どれも大した反応は得られず、インタビューは終了。

「え!まじですか」
「スタッフ泣かせだな」


偽番組収録のためにスタジオに向かった片瀬と千。挨拶をしながらスタジオに入ったところで、片瀬の表情が固くなったのを、カメラは見逃さなかった。


仕掛け9:スタジオ内に放たれた大量の子犬


「Oh!キュートです!」
「というか、心霊現象のあと5つも仕掛けあったのか」
「スタッフさん、お疲れ様です…」

「あれ?スタジオ間違えたかな…?他の収録の準備してますね…」
「いや、ここのはずなんですけど。ちょっと確認します。すみません、こちらで、少々お待ちください!」

スタジオを間違えたかのような演技をしたスタッフが、そう言ってディレクターの元へと向かったと同時に、片瀬は千の後ろに隠れた。

「なに?」
「いや…なんでもないです」

明らかになにかありそうな片瀬の表情。
そんな2人に数匹の子犬が駆け寄ってきた。

「へー。かわいいね」

その場にしゃがんで子犬を撫でる千とは打って変わって、その場に固まってしまっている片瀬。

「ほら、かわいいよ」

「いや、真顔じゃんか」

千が一匹の犬を抱き上げ、片瀬の顔の前に掲げた瞬間!片瀬は声にならない悲鳴をあげながら、犬のいない方へと逃げていく。

「えぇ?!」
「まじか」
「なぜ逃げるのです?!」

逃げた先、パイプ椅子の上で膝を抱えるように座っている片瀬の足元にも、数匹の子犬。
ちなみに、きちんと靴は脱いでから足を椅子の上にあげている辺り、片瀬の真面目さが伺える。

キャンキャンと子犬が吠えるたびに、肩を揺らしているあたり、どうやら片瀬は犬が苦手なようだ。

「奈々美ちゃん、犬苦手だっけ?」
「千さん、知ってるじゃないですか〜!」

助けてください!!と半べそをかきながら嘆いている片瀬。
そう、実はこの仕掛け、Re:valeの千に任せた特別な仕掛けだったのだ。


事前のインタビューに、千はこう答えていた。

−片瀬さんと親睦が深いそうですが
「そうね。昔馴染みだし、最近共演も増えてきたから仲はいい方かな」

−何か苦手なものとかご存知ですか?
「苦手なもの…心当たりはあるけど、今も苦手かわからないな」

−教えていただけないでしょうか?
「今教えたらつまらないだろう?僕に任せてよ。事前のリサーチも。絶対に彼女の意外な姿をお茶の間のみんなに届けるって約束するよ」

「迷惑な約束だな」
「Mr.ユキ、楽しそうです」

事前の打ち合わせ時、自信満々すぎていささか不安だったが、どうやら千の仕掛けは成功したようだ。

パイプ椅子の上で自身の膝に顔を埋めている彼女にバレないよう、スタッフが千に看板を渡し、周囲にいた子犬をそそくさとゲージに入れていく。
片瀬はどうやらそれに気が付いていないようで、一向に顔を上げる気配がない。

「奈々美ちゃん」

助けてもらえると思ったのか、片瀬が勢いよく顔を上げる。
眉は下がり不安そうな表情の片瀬は、千が掲げている看板を見て、彼女は瞬きを繰り返した後、唇を結び眉間に皺を寄せた。
怒っているのだろうか、初めて見る表情だ。

「てってれー。大成功」

ピースをしながらそう言った千を、片瀬は相変わらずの表情で見ている。
仕掛人のスタッフとカメラが近付いてもその表情は変わらない。

「あれ?もしかして怒った?」
「…怒ってないです」
「そう?その表情はどんな感情の表れ?」
「…顔に力入れてないと泣いちゃいそうで」

そう言った片瀬の目には薄らと涙が浮かんでいる。
どうやら、怒っているわけではないようだ。

「なるほど。ごめん泣かないで。奈々美ちゃんが驚くものって、これくらいしか思い浮かばなかったから。最終手段だったんだ」
「…感じたのは驚きよりも絶望でした」

「絶望って!」
「ナナミ、顔が本気です」

周囲を見回し、子犬がいないことを確認した片瀬は、いそいそと靴を履き立ち上がり、深呼吸をした後何事もなかったかのように千の横に立った。

「…えっと、なんでしたっけ?」
「え?」
「番宣の収録…別のスタジオでした?」
「あ、いえ、この収録自体が偽で…」
「はっ…!そっか、ドッキリ、そっか…」

未だに動揺してるのか、両頬を自身の手で包みながら、なぜかその場で一回転した片瀬。その謎の行動に、Re:valeの千は吹き出すという、なんともカオスな空間だ。

「こわ…」


「大丈夫ですか?」
「何がですか?え?全然問題ないです。全然、はい」
「なんで犬が苦手なんですか?」
「え?別に、全然苦手とかそんなんじゃないです」
「苦手じゃないんですか?」
「はい。苦手なわけじゃ…」
ワンワン!
「嘘ですすみません苦手です」

「いや!訂正早いな!」

遠くから子犬の鳴き声が聞こえ、ようやく白状した片瀬は、ちゃっかり横にいる千の服の裾を掴んでいる。

「なんで犬が苦手なんですか?」
「…幼い頃、大型犬に追いかけられたあげく、のし掛かられて、顔中舐められて、その時に、あ!食べられる!って思っちゃって…怖くなりました」

「あ〜あるあるって感じだよなぁ」

「今回は子犬でしたが?」
「子犬は子犬で、その…噛まれそうになったことがあって、やっぱり小さくても怖いんですよね…。映像とか、遠くから見る分にはまだ、なんとか…」
「このドッキリを仕掛けた千さんをどう思いますか?」
「え?どう…?」
「正直に言っていいよ」
「今度絶対ドッキリ仕返してやる!って思いました」
「…へぇ」

「圧が!」
「ナナミ、やはりハートが強いです」

「仕掛けるとしたらどんなドッキリを仕上げたいですか?」
「えっと、寝起きドッキリとか」
「僕、なかなか起きないけど平気?」
「も、百さんと頑張ります!」
「そう。頑張ってね」
「では、最後に片瀬さん、この看板を持って、一言お願いします」
「あ、はい…えっと、ドッキリ大成功〜!…これ、やられた方が言うのおかしくないですか?」

以上、女優 片瀬奈々美のドッキリでした。



back


novel top/site top